第59話 作戦開始

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『まもなく、学祭終了時刻になります。今年は後夜祭こうやさいが行われないため、終了時刻以後の片付けが可能ですが、露店ろてん撤収てっしゅう等、出来る片付けは事前に済ませておきましょう。……』



 ――――プレジア大魔法祭だいまほうさい、三日目の夕方になった。



 学祭がくさいの終了を告げるアナウンスが、どうしても俺の胃を重たくさせていく。



 マリスタ。

 お前の言っていた計画とやらは、一体どうなったんだ?



「何も行動を起こしませんでしたね、学生達」

「劇がすごかったからねー。ペトラも見たんでしょ?」

兵士長へいしちょうと呼べイフィ。まだ仕事中だぞ」

「わかってる――――いよいよこれから、ってことよね。結局を使うことになったの? 私あの後会議外されたから知らないのよね。どっかのクソゴリラさんには私がジャマだったみたい」

「イフィ」

「はいはい」



 扉越しのアルクス共の声がやけに遠い。

 近くで感じる胃の痛みに、神経のほとんどを動員してしまっているからだ。



 ――冷静になるべきだ。

 焦っても仕方がない。それしか道が無かったとはいえ、俺は奴らを信じる道を自ら選んだんだ。座して待つ他無い。



「――――ッ」



 そうわかっている。

解っているんだが――心はがんとして受け入れず、体は今にもこの扉を打ち壊さんと叩いてしまいそうになる。

 胃の重みに意識を集中することで、なんとかその衝動をおさえ込めている感じだ。



「…………!」



 振りかぶられた拳をゆっくりと下げながら、唐突に気付く。

 違う。俺は焦っているのではない。

 内臓ないぞうに感じるこの重みは、恐らく怒りとでも形容した方が正しい。



 そう考え始めた途端とたん、妙に筋が通ったような気分になった。

 体内でグズグズになったどす黒い感情が、辛うじて怒りとして成している。



 全ては、俺の弱さゆえ

 他人頼みになってしまったこの状況に何一つ介入出来ない、罪深いほどにもどかしい気持ち。



 ――めろ。流れに身を任せるしかないこの絶望を。

 心身に刻み込め。おの非力ひりきで手を離れた、俺自身の運命を。



「…………頼む・・。マリスタっ……!」

『時間になりました。これをもちまして、プレジア大魔法祭全ての出し物を終了とさせていただきます。これから風紀委員ふうきいいん巡回じゅんかいし、営業している露店があった場合は翌年の出し物に――――きゃあっ?!』

『!!?』



 女生徒の悲鳴と共に。

 光のこすれるような音がして、突如放送が途絶とだえる。



「…ペトラ!! ちょ、まさかこれ敵の奴らが――」

「…………」

「大変だ兵士長へいしちょうッ!!」



 扉を乱暴に開け、別のアルクスが詰所つめしょに転がり込んできた。



「敵か!?」

「学生共だ。あいつらの企画・・・・・・・、明らかに――――チラシに書いてあった内容と違うぞ!?」

「なっ!?」

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