5
「小さかったころのこと。父さんに続いて、母さんまでがいなくなって、それで――――まだものも分からなかったあたしと
エリダの
「あのときのこと、少ししか覚えてないのよね。忘れたいのかな、
「よしてよ。結果的にそのせいで、私はあんた達をしばらく置き去りに――――」
「でも命を救われた。姉さんの運動神経が飛び抜けてるのは知ってたけど、あれほどとは思わなかったわよ。男たちを滅多打ちにして、一人には死にかけるほどのケガさせて……確かに、
「…………」
「でもそうやって、あたし達は姉さんに導かれてここにいる。ここで何不自由なく、同い年の友達とバカみたいなことして過ごせてる。今でもすっごい、すっっっごい感謝してんだからね。ホント。いくら感謝してもし足りないよ。…………あたしは、そんな姉さんを信じてるの。だから話した」
「――!」
「王国騎士にはならなかったけど、姉さんがアルクスに入った理由もわかってるつもり。今だって苦しいんでしょ、アルクスが
「……エリダ、あんた」
「
「あんたね……それ本人に絶対言わないでよっ!?」
「言わないわよ!! あたしが疑われちゃうってンなことしたら!! ったたた……」
「っ……もう、ホントに」
「……あたしは、そんな姉さんの姿を今でも信じてる。……信じたい。そうやって、
「……………………はあ。あんたには助けられてばかりね」
「え?」
「今と同じような目を、昔あんたに向けられたことがあるの。さっき話した、私が男どもに飛びかかっていったときにね」
「ええ? や、あの時確かあたし、首
「覚えてないのも無理ないわ。あんたは私を助けてくれたのよ、エリダ。最後の男
「そ、そこはフツー男『に』私『が』やられそうになるんじゃないの……?」
「野生の本能ってやつよ」
(ホントなるべくしてなってるわよね
「とにかくそうして、私が男を殺そうとしてた時にあんたは……私の
〝ころしたらだめだよねえさん、ひとごろしはぜったいだめだよ!!!!〟
「そうやって、泣きながら私を止めてくれた」
「…覚えがないなあ……そんなの
「酸欠だったのか、その後すぐ気絶しちゃったから。その弾みで忘れちゃったんでしょうね。でも私はハッキリ憶えてる。今のあんたの目はその時にそっくり…………私を助けようとしてくれたときに」
「た、助け……ってこともないでしょ。男は全部姉さんが――」
「ううん、私は助けられた。おかげでこの手は、
「――――」
「……また
「! な――何!?」
「もし、その作戦が
ペトラの言葉に、エリダが一瞬輝かせた顔をみるみる
責めるような目で、エリダは首を横に振った。
「ごめん姉さん。それだけは出来ない。あたしはもうとっくに当事者……ううん。当事者でなきゃいけないのよ」
「『なきゃいけない』?」
「うん。だってコレはプレジアの事件だから。襲われてるのは、あたしの友達だから。それにあたしだってもう……魔法使いの
「…………」
「アルクスじゃないけど、私にも私の義勇がある。許せないことがある。これはみんなでの戦いよ。でも同時に、あたしの戦いでもあるんだよ、姉さん!」
「…………っ」
「お願い姉さん、あたし達に協力して! 少しでも戦争になる可能性が少ない道を選ばせて! あたしは――――
エリダが深く頭を下げる。
ペトラは自分と
「…………
「!! あ――――――ありがとうっっ!!!」
空の薄暗い教室に大声を響かせ。
エリダは足早に、ペトラの下を去っていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます