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「何が起きても、プラン通りに演出すること。中途半端に止めたりしちゃ、絶対だめよ」

「は、はあ……」



(もう信じるしかない。誰もケガしないこと。そして、)



「………………」

「そうとも、これは遊興ゆうきょうだ! オレの心にただ一つ、全く無価値な火を灯す!!!…………お前との、対等なる敵同士としての時間だ」

「キモい」

「……………………、 。キモかろう?」



〝――『痛みの呪い』の発作を感じなくなった〟



(あの子が、あのとき・・・・と同じ状態になってることを)




◆     ◆




それはただの振り付けだった。



 溶岩の飛沫しぶき吹き荒れるかつ火山かざん

命ある者がみ入ることを許されぬ場所への瀬戸際せとぎわで、クローネとゼタンは光を斬り結んだ。



 青と赤の剣光けんこうが弾け――ゼタンが飛び退すさり、クローネが地を転がり、どうにか体勢たいせいを整える。

 赤いひびれをにじませる大地は今にも破裂しそうなほど張り詰めており――それを踏むにつけ、本当にこの下にマグマが胎動たいどうしているように思えてならない。



 だが、これらは全てツクリモノだ。

 この地面も溶岩も、剣光も――ギリートの宿す闘志も。



「そうら。火山がいている。お前の魂を呼んでいる」



見れば見る程、まるで本物では無かった。

ギリート・イグニトリオは、最早もはや俺に何の期待も抱いてはいないのだ。



「そうかな。俺にはお前を呼んでいるようにしか聞こえない」



いや――あるいは俺が前回感じていた闘志など、呪いがそう感じさせただけのまやかしだったのかもしれない。

それほどに、ギリートはゼタンという役柄やくがらてっしている。

そこに楽しさなど微塵みじんも感じられない。



 ――――まあ、そうだよな。



「おおっ!!」



わたしは待とう、騎士クローネ・・・・・・。この神の座で、お前を〟



 あの時から、俺は一体何度こいつの期待を裏切ったことか。



「――――?」



 あの時から、俺はどれだけこいつの好意に甘えてきたか。



〝お前は魔王になるんだ、圭――――なればこそ、私は魔女となってお前と一つになろう〟

〝お前は終わりだ。天瀬あませけい



 同じだ。

 絶望から、また全てを諦めてしまいかけたあの時と。

 あの時乗り越えられなかった壁が、今また俺の目の前にそびえ立っている。



 もう誰も、俺に手を差し伸べてはくれない。

 えさを与えられるのを待つ雛鳥ひなどりのままではいられない。

 それを、



〝「作戦は生きてる」! もちろん私達もそう思ってるよ、ケイ!〟



 ――どんな絶望からでも道を切りひらく力を、あいつらは俺に見せてくれた。



 次は俺の番だ。

 俺が――――俺自身の絶望を、切りひらかなければ!!



「ッッ――――!?」

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