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(くっ、あいつ後で絶対っ……っていうかそう、そうだわよ。なんで私はこんな慌ててんのっ。別にいつも通り接すればそれで――)

「ケガは?」

「!…………それさっきもかれたのだわ」

「あ……そうだったっけ。悪い」

「……あのさあ。仕事するならするでもう少し気ィ入れてやってほしいのだけど。なんでそんな上の空なのだわよ」

「いや、その……………………ごめん」

「は?」

「見本の表紙。折り目とか酷かったから……ごめん」

「な……なんでそれをあんたが謝んのだわよ」

「だって、僕がもっと機敏きびんに動けてれば、地面に叩き付けられることも無かったわけだし……」

「ああ……やめてくれるそういうの。面倒なのだわ」

「め、面倒ってことないだろ」

「あれはあのカスどもがやったこと。あんたに責任はないでしょどう考えても。むしろ……その。守ってくれた方でしょ。あのラントとかいうカスのハゲてる方が」

「ハゲじゃなくて坊主だよあれは……」

「余計な横槍入れんなっ。だから、あいつが見本をみつけようとしたとき、あんたは助けてくれた。それ以前はあんたここに居なかったんだから、助けようがないでしょ」

「それは……そうなんだけど」

「ああヤダ、『カンペキニマモレナカッター』とかの自己嫌悪ならヨソでやってよねウザったい。一昨日おとといの襲撃のことを気にしてるのか何なのか知らないけど」

「!!」

「あの時のことはもう終わってんの。被害だって記憶がちょっと消えた程度だし、私が感謝を伝えてそれで終わり。あんたは神じゃないのだわよ? 誰にだって限界はあるわ」

「……ありがとう、フォローしてくれて」

「ふぉ――ふぉろーとかじゃなくて事実って言いなさいよヒクツ男ッ! べつにっ、私はふぉろーとかそういうことをしたいんじゃないのだわ!」

「う、うん、うんわかった、わかった。なるべく離れてるからその、落ち着いて……」

「だからこないだみたく怒ってるわけじゃ――ああもうめんどくさこの男ッ!――――ちょっと待ちなさいったら!!」

「!」



 顔を守るように両手を力無く上げ、すごすごと離れていくテインツのローブのすそをシータがつかむ。



 テインツが振り向き、シータと目が合う。



 どちらが黙り込んだのか、またもよく分からない沈黙が流れ――――



「っ――――借りを返したいのだわッ!」



 急速に顔を赤くしながら、シータがそう言い放った。

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