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「今日こんな場を持たせてもらったのは、みなさんにお知らせしなければならないことがあるからです。それを、マリスタ・アルテアスさんに伝えてもらいます!」



 ――マリスタだと?



「ま、マリスタ・アルテアスです、は――初めまして、どうも。えっと……今日皆さんにしなきゃならないお知らせというのは……プレジア大魔法祭だいまほうさいの中止についてです。はい、はい。驚きはあるでしょうが、落ち着いて聞いてください――」



 最初こそ覚束おぼつかなさはあったものの、マリスタは堂々とした声で話し続けた。

 学祭が今日で終わること。

 それが学校長がっこうちょうとアルクスの決定であること。

 決定の理由を、自分たちはほとんど知らされていないこと。

 知らされていないのに、尻拭しりぬぐいのように義勇兵コースの人間が使われていること。



 襲撃者やその正体など、隠さなければならないところはうまく隠し。

 マリスタは更に、急に次々と帰還し学祭の中止を命じたアルクスによって、自由を不当に拘束されている人物がいること。そのせいで、本日まで認められていた学祭のもよおしを一切行うことが出来なかったことを告げた。

 俺やフェイリーのことだ。



 そこでやっと、理解した。

 今外で起こっていることを。マリスタらが何を目的としているのかを。



 だけど、一日と時間がない中で一体どうやって――



「こんな理不尽を、アルクスの横暴を、私達は許すことが出来ませんでした。私達は既に先生方と連携し、不当な拘束とプレジアの理念に沿わない学校運営をぜ――是正ぜせいするよう、連名して勧告書かんこくしょを提出しました。でもいまだに、勧告書を受けての返答をいただいていません。大魔法祭はあと一時間もしないうちに終わってしまいます。このまま、アルクスと学校長の逃げ切りを許していいのでしょうか!?」



 マリスタの声に合わせ、いくつもの怒鳴り声が重なって、俺の耳にまで届く。

 ああいう活動をするに適した場所と言えば、きっと第二層だ。

 二層も上のこの場所にまで、怒鳴り声が聞こえてくるということは……きっと、訴えを起こしている人数は相当数に上るはずだ。

 そんなに大きな集会を、マリスタ達は……一日と日を置かず、実行出来たってのか?



「もう時間がありません。ですから皆さん、どうか力を貸してください! 第四層のアルクス達に届くまで――私達と共に、抗議の声をあげてください!! お願いします!!」



 ………………なんと、まあ。



 間髪入かんぱついれず、怒号どごう階下かいかからき上がる。

 気が付けば、ドアの向こうからアルクス共の声は聞こえなくなっていた。騒ぎをおさえに下へ降りたのだろう。

 だが抗議の怒声が止まないところを見ると、鎮圧は全く出来ていないようだ。



『アルクスは今すぐ返答しろー』

『返答しろー!!!』

『プレジアの名をけがすなァッ!!』

『汚すなァー!!!』



 ……このやる気のない声とドスの聞いた大声。

 トルトとファレンガス・ケネディだ。

 教員達も一緒なのか、もしかしなくても。



 ――――俺やフェイリーの為に、一体どれ程の、人数が。



 扉を背に、もたかる。



 今、俺には何もできない。

 ならばその心地よい怒声に、今しばらくは身を預けておこう――――




◆     ◆




「……そうか。口を割らんか」

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