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 激しさを増していく二人。

 怒声の応酬おうしゅうを聞きつけたマリスタとナタリーが近くにいることなど、気付きもしない。



「あの馬鹿たちがやろうとしてることはね、もうお話にもならないほど無茶で無謀むぼうで、イカレたことなのだわよっ!! 作戦とか行動とか、そんな御大層ごたいそうなもんじゃないのだわ! だからこそあの腰巾着こしぎんちゃくのナタリーさんも出張でばってこないのよ!!」

「! そ――それはそうだけど」

「そうだけ『ど』!? ハッ、その時点で何の期待ももてない馬鹿による馬鹿げた馬鹿らしい茶番なのだわよッ! いい? あいつらがやろうとしてるのはね、学長プレジアとアルクスがあいつらなりに二十年積み上げてきたルールでもって拘束こうそくされてるアマセ君を! 今日になってパッと思いついただけの主張で!! なんの準備もしてない付け焼刃その場しのぎのやり方で!!! しかも即日そくじつ解放しろっていう余りにも自分たちの都合しか考えてない自分勝手の極みみたいな要求なのだわよ!!!!」

「解ってるよそんなこと!! でもそれでも声をあげたいって、こんな理不尽がまかり通っていいわけあるかって思うから動くんじゃないか!! 結果がどうなるかなんてわからない、茶番になるかどうかはやってみないと分からないッ!! 諦めるよりずっとマシだッ!!」

「この――!!!!」

「ちょっと待ったッッ!!! 二人ともそこまでにっ、やめ――――こんなとこでケンカしてても迷惑でしょッ!!」



 たまらず仲裁ちゅうさいに入ったマリスタが、二人を引きがす。

 怒気を収めないシータに対し、テインツはマリスタの姿を認めた途端とたん、急冷されたかのように怒り顔を引っ込めた。



「あ……アルテアスさん」

「さすがキレ散らかしてケイさんを殺しかけたことがあるオーダーガード家の嫡子ちゃくしサマですね。周りの様子に気付きもしなかったんですか?」

「え……あ。わ、す……すみませんっ、お騒がせしましたっ」



 慌てて取りつくろい、周囲に頭を下げだすテインツ。

 シータもなんとか怒りをおさめ、にじんだ涙を拭いながら顔をせる。



 その時だった。



「あ、あの……アルテアス先輩っ」

「え? あ――えっと、確かあなた」

「は、はいっ。劇の後、お話しさせてもらった者です。声が大きかったので、聞こえちゃったんですけど……アマセ先輩、アルクスに理不尽な理由で捕まってるんですか?」

「え――」

「え、あれってあの劇の人達?」「アマセっていったらあいつだろ、実技でティアルバーを倒したっていう」「あのカッコイイ人でしょー?」「へぇ、あの人たち劇なんかやってたんだ」「知らなかったのかよ、結構面白かったぜ」「俺も見た! ってたよな」「学生の芝居しばいにしてはよかったよね」「でもちょっと待って、ってことは今日の劇はどうなんの? 私今日見行く予定だったんだけど」「私もー!」「嘘でしょ、もうアレ見れないの!?」「理不尽な理由で捕まってんだって」「え、何それ知りたい」「何が起こってるの?」

「――――」



 ナタリーが目を見張り、周囲に広がっていく好奇こうきの声を見回す。

 マリスタは改めて目の前の――話しかけてきてくれた、名も知らぬ一人のファンへと視線を戻した。

 少女は少し恥ずかしそうに、だがしっかりと、彼女に視線を返す。



「私、またアルテアス先輩が――あの劇が見たいです。あの……応援してます!」

「…………!」

「そっか。助けようとしてるんだね、アマセ君を」

「え?」

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