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「それだけではありませんよ。学長とは青年期より、共に学び競い合い、この国の行く末を語り合った仲です。それを理由に私を
「事が事だ。疑わしきを放っておけない」
「私のもとにはアルクスの一人も来なかったのに?……その場しのぎの弁明は見苦しいですよ、
「昔のことだ、いつまでも先生面をするな」
「そうですね。昔は昔、今は今ですね。ではアマセ君を解放してくれますね?」
「それは俺が決めることではない」
「……恐らく
「………………」
――初めて、小さく怒りの色を見せたガイツから目を離し、アドリーは去っていった。
しまったドアを見つめながら、俺など見もせずにガイツが口を開く。
「感謝するんだな。気骨のある者が、教師連中の中にも居たことに」
「……『戦うならば確実に撃破しろ。敵わないなら全力で
「……?」
ガイツの目が俺に向く。
拘束されていた感触の残る腕を
「聞き覚えあるだろ。前、あんたが
「
「探りさ」
「――わざわざ俺の疑いを濃くしてどういうつもりだ?」
「アドリーの言う通りだ。この状況でリシディアと力比べをしても
「…………」
……嘘の吐けない男だ。
あまり
「何か隠し玉があるんじゃないのか。こんな分の悪い賭けに出られるほどに、決定的な何かが」
「行くぞ」
ガイツは答えず、他のアルクスと共に部屋を出ていく。
俺が部屋の構造に意識を向けかかったとき、不意に彼の声が聞こえた。
「俺達は、このプレジアを守ろうとしている。お前はどうなんだ、アマセ」
「……そうは見えないな」
「…………」
扉が閉じ、鍵のかかる音。
ふらつくように壁に寄りかかり、強張った体から空気を抜くようにして
「……俺が、プレジアを守るかって?」
……冗談じゃない。
俺は今、俺の現状を把握しようとするだけで精一杯だというのに。
◆ ◆
「…………ぅうェ」
……「胃が痛い」って、精神的なモンじゃないのね。
物理的に痛むモノなのね。
お腹が空きすぎて、
まったく、なんだってこんな大変な時に――――
胃をおなかの上からさすりながら、目の前にそびえ立つ大きな大きな門を見上げる。
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