14

「馬鹿ね。人間はハナから平等じゃないの。誰のせいでもない、全部アンタのせいよ。…………いや、そうとも言えないか。このプレジアに関しては」

「…………」

「言ったとおりだったでしょ、ここプレジアは差別さべつ偏見へんけんめだって。あんたみたいな『平民』が、貴族サマを差し置いて主役張ったり、試験で優勝したり。ここでそんなことしたら、そりゃみんなあなたを恨むわよ。その程度の民度みんどなんだもの、プレジアってのは。ここにいる限り、あんたは一生そうして虐げられて暮らすしかないのよ。掃き溜めの中でうずくまって」

「黙れよっ!! 俺にはな、ここしかないんだよ!! ここを出たって行く当てはない、頼れる奴もいない!! 俺は一生――――一生ここで生きていくしかないんだよ。気楽なお前とは違うんだよっ!!」

行く当てがあったら・・・・・・・・・、どうするの?」



 ココウェルはけいの後ろ髪をつかみ、引き倒すようにして自分の方を向かせる。

 ひざを着いた圭が顔を上げた先には、闇の中でも輝く尊大そんだい木賊とくさいろの王女の両目。



「もし、行く当てがあったとしたら。あなた・・・はどうするの? ケイ・アマセ」

「ど……どうする、って」

「そこへ行くの? このプレジアを、あおいだを、つないだ関係を捨てて。そこへ行くことを選ぶの?」

「――――――」



 言葉を失い、体を震わせながらうつむく圭。

 王女・・は高鳴る鼓動こどうと笑いそうになる顔を必死に押し止め、更に追い打ちをかけた。



「プレジアは所詮しょせん、ただの学校よ。その上プレジアという学校は、王国に不穏分子ふおんぶんし扱いを受けている。さも卒業生は、魔法のエキスパートとして全国的に活躍しているように言われてるんでしょうけど……そんなの嘘っぱちよ。だって『プレジアそつ』というだけで、このリシディアでは不穏分子扱い。どこにいっても厄介者やっかいもの扱いされるのがオチ…………でも、王国は違う・・・・・

「!」



 少年は、暗闇にわずかに差し込む光に金色の目を輝かせ、後光ごこうを背負った王女の影を見る。



「どんな形でも、王国に仕官しかんしているとなればそれはほまだかいこと。行き交う人々全てに称賛しょうさんされ、憧れと羨望せんぼう眼差まなざしで見られる。他国に行っても、王国のだといえばそれだけで一目置かれる。目の前に、無限の可能性がひらけてくる――――王国騎士となれば・・・・・・・・、なおさら」

「!……ココウェル、」

「でも、王国騎士はせまき門よ。戦いや魔法に精通していることはもちろん、部隊長クラスの兵士たちのとりまとめ役にもならなくちゃいけないし、何より役目を果たせるだけの知性が無いといけない。あなたみたいに・・・・・・・ね」

「お前……まさか俺を騎士に、」

「あぁでも」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る