26
アトロ
「結果の報告だけか?……導けよ。これまでのように、俺達を」
「考える時間をくれ。そして、皆が悲しみを乗り越え、また前を向けるだけの時間も。君にもそれが必要だろう」
「
「――――――」
自虐的な笑みを浮かべ、男が小さく首を振る。
「……ネコかぶってんじゃねぇぞッ!!! 一人で平気そうな顔しやがってッ!!――――言えよちゃんと。負けたんだろ俺達は。もうどこにも『前』なんてねぇんだろうがッ!!」
兵士がクローネに
慌てて涙を
「全部、全部。全部なくなったぞクローネ、ええ? 親兄弟も妻も息子も友達も先生も、俺には誰も居なくなったぞッ!! 俺だけじゃねぇ、ここに居る連中はどいつもこいつも!!!」
「ちょっと――やめなさい!」
「どうだよ昔と比べてよ、ああ? お前達三人に乗せられて!!! 人間はもっと自由に暮らせるだのなんだの言われて!!! 結果がコレか?? 自由になったか俺達は??――――自由なんてカケラも無くなっちまったじゃねぇかッ!!!」
兵士がクローネを投げ飛ばす。
「何言ってるのッ!! みんな覚悟のうえでここまできたんでしょうッ!」
「自分が死ぬ覚悟なんざとっくに出来てたよッ!!!――――大切な人達を神の支配から解放するために死ぬ覚悟はッ!!」
「!」
「でももう誰も居ねぇんだよッ! 誰もいないんだよッッ!!!――――俺達に何が出来るよ。何が残ってるよ、あぁ?――――
座り込む生き残りの中にはクローネを
皆、悟ってしまっているのだ。
もう何をしても、本当に無駄だと。
どうあがこうと、泣き叫ぼうと。そう遠くない未来に、人間は滅亡するのだと。
だから。
「そうだ。きっと神も同じように考えてるだろう」
だからこそ、クローネの淡々とした声は、部屋へとやけに大きく響いた。
「だから、奴らは必ず『詰め』の
「……詰めの先手?」
「クローネ?」
近しい立場である
「……テキトーなこと言ってんなよ総大将よォッ!! 先手を打ってくるって、その先手で俺達は終わり――」
「奴は今、この上なく上等な『心の力』を手にしている」
「――上等な?」
「俺達人間が、生きているだけで貯めることが出来る、
「ゴチャゴチャ言ってんじゃねえよ、それが今の状況やお前の言葉と何の関係――」
「だからこそ俺達はまだ生かされている」
「――――――」
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