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◆     ◆




「ぐうううぅぅぅぅうううぅぅぅううううッッッ!!!」



 ろくな準備も無いまま、彗星すいせいの如き巨神の一撃を受け切れるわけもなく。

 何の術式じゅつしきない、魔力まりょくだけにあかせた物理・魔法障壁を展開したタタリタが、ただ拳に押されて都市へと共に落ちていく。



「だめ――――ダメダメダメダメえええええエェェェェッッッ!!!!!!!」



 空間がゆがみ、魔素が火花を帯びて小さな稲光いなびかり幾重いくえにも大地に伸び――――地面が起き上がる・・・・・



 非戦闘員が住まう城塞都市じょうさいとし。その周囲の大地という大地が蛇のようにうねり結合し、巨壁きょへきとなって都市とディオデラとをへだて――――地の津波つなみは巨兵を押し倒した。



「はぁっ…………ハァぁッッ……!!!!」



 タタリタが手を組み、再び空間を歪ませる。

 途端空気が、まるで意志を持ったかのように彼女に従い、砲弾のように小さく固まって――――ディオデラに激突、炸裂さくれつした。



 周囲の山地が吹き飛ぶ。



 空気圧に押し潰され、巨兵は大地を割って沈み込んでいく。

 タタリタは体中に、魔力回路ゼーレが焼き切れた内出血のあとにじませながらも、反撃のすきを与えぬよう、更なる大魔法だいまほうを――――



 ――――大木のような槍が、タタリタの胸を貫いた。



「タタリタァァァ――――――――ッッッ!!!!」



 遅れ訪れたクローネの叫びも、ゼタンをにらみ付けたタタリタには届かない。



「つくづく失敗作だな。どうの九割を吹き飛ばされれば即死するように創ったはずなのだが」



 その傷は、貫かれたなどと生易なまやさしいものではない。

 タタリタの胸部は、ほとんどがその大木の一棘いっきょくによって吹き飛んでいたからである。



「タタリタァッ!!!」

「おお。失敗がまた釣れた。そう慌てずとも、お前もこれから――――」



 クローネが身を翻し、またんだ。



 足場となった空気がゼタンの前で荒れ狂い――タタリタの血をそのほおに飛び散らせる。



「速いな。人の身でよくそこまで高めたものだ」



 クローネはゼタンから、戦場からぐんぐん遠ざかっていく。

 しかし、



「だがもう飽きたぞ。届かぬ振り・・も」



 ――――――星を割る音が響く。



 地震。

 そして迫る、背後からの影。と砂埃すなぼこり土塊どかい



 タタリタを担いだクローネは、肩越しに目にする。



「――――――――嘘だろ」



 星の地殻ちかくに手を突っ込み。



 ディオデラは、まるでたたみを返すように大地をめくりあげたのだ。



「死ね。神の力で」



う――――おおおおぉぉぉぉぉッッ!!!



 ――――この叫びを野太くするためにだいぶ練習し、一度は声をつぶした。

 地鳴りに負けない叫びをあげ、大地の津波から逃げるクローネ。

 しかし結局は逃げきれず、クローネとタタリタは――



 ――大地が突如とつじょ、加えられた力の向きとは反対側にうねる・・・

 大地はそのまま収束し巨岩となり――ディオデラの頭部に、隕石いんせきのように空気を貫き突っ込んだ。



「――――タ――――」



 突然、意志を持ったかのように動き出した大地。

 こんな大魔法・・・・・・を操れるのは――――



「――タタリタッ! その体で何をやってるんだお前!!!」



   逃げて



「――――え?」

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