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◆     ◆




「やったぜエリダ!!! 成功したじゃんか!!!!」

ただだだだ。アホマリスタ、やめ……」

「マリスタ。それだと首が締まる」

「あっごご、ごめん!」

「うん……いい……」



 舞台セット裏で、尻餅を付いて座り込むエリダ。

 その肩は未だに上下していて、荒い呼吸も不規則だ。



 義勇兵ぎゆうへいコースでもなく、英雄の鎧ヘロス・ラスタングも使えない。

 稽古けいこから本番まで、とてつもない運動量であったはずだ。

 それでも、エリダはやり切った。

 大したものだと思う。



「あと頼んだからね、あんたたち……っ」

「――ガッテン!! エリダもしっかり休んでてね!」

「うん……」



 それきりタオルを首に、エリダはうつむいて動かなくなった。

 疲労困憊ひろうこんぱいだな。そっとしとこう。



 さて、次は。



 マリスタの、見せ場のシーンか。




◆     ◆




「はっきり言え、ゼタン。プデスは死んだのであろう」

「…………わからん。だが、あの戦い以来魔力を感知していない」

「……在り得ぬっ。神を……親も同然である我らを手にかけるなどとっ!」

「まったくだな」

「なんなのだ先程からその生返事は!! プデスが死んだと聞いて貴様、事の重大さが解っておるのかッ!」

「おうとも」

「次は君か、それともわたしか……悠長に構えている暇はないと、まさか解らんのか?彼らの凶刃は――――今にも我々に届こうとしているのだぞッ!」

「だから戦わないことにした」

「…………何?」



 ロハザー演じるキュロスが、ギリート演じるゼタンの言葉を理解出来ず、まるで変質者を見るような目で顔をしかめる。

 しかしキュロスのテンションとは裏腹に、ゼタンは実に落ち着き払った顔で手を止め、キュロスを見た。

 その手には、怪しい光を放つ文言もんごんが記されている魔術書まじゅつしょがある。



「……君、それは何だ?」

彼奴等きゃつらが魔法を操るようになり、我々と同じ次元に立ったために、我が目論見もくろみくるうたのだ、キュロス。わたしはそれを元に戻すことにした」

「元に戻す? 君が何を言っているのかわから――――」

「少し。いただいた」

「…………!?」



 キュロスが目を見開く。

 鼓動こどうするかのように魔術書が震え――――ゼタンの手を離れてくうへと昇っていく。



 放たれるその力を、キュロスははっきり覚えていた。



「……ゼタン、貴様……『供物くもつ』に手を出したというのか!!」

「すべては我らの存在理由のため、そして元はわたしが集めた心の力だ。少々借りたところで、意志・・は我らを罰さぬよ、キュロス」

「それ以前に本末転倒ほんまつてんとうではないか!!! 心の力を集めるために心の力を使うなどバカげている!! そんな判断も出来なくなってしまったのかゼ――」

「申し訳ないと思うておる。ゆえに最速で、終わらせる方法を使うことにしたのだ」

「お前は先程、『戦わない』と申したのだぞ!」

「そうだ。戦わぬ――――ただ駆逐くちくするだけだ。失敗作共を、この力でな」



 震動。

 と共に、キュロスの前に現れたのは――――――大きな大きな大きな、眼。

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