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◆     ◆




 神々の強さは、その固有の大魔法だいまほうにより、一人で数千数万を相手に出来るような脅威きょういとなることである。



 特に、神プデスは――――臆病おくびょうながら、ゼタンの差し金でヌゥに止めを刺したこの神は――――、「化身けしん」と呼ばれる、魔法以外では触れることさえ出来ないもう一人の自分を天下界てんげかいに召喚し戦わせていたため、人間達は彼になんの痛手も与えることが出来ず、敗走を繰り返していた。



 これまでは。



手筈てはず通りいけよ、タタリタ!」

「そっちも頼んだよっ、クローネ! クヲン!! しゃあ――――全員突っ込めぇーー!!!」

「っ!?」



 偃月えんげつ

 タタリタを中心に、一つの槍のようにしてプデスの化身けしんに突撃していく人間達。

 客席の間を、裂帛れっぱくの気合でもって役者達が駆け抜けていく。



「な、何のつもりだ……貴様等ッ!!」



 化身のプデスが舞台上で叫び、観客の視線を舞台へと戻させる。

と、くうに石の槍が多数出現し、観客席側――走っていった役者達に向けられる。

 この辺りの演出方法にはくわしくないが――どうやらあの石槍は光属性ひかりぞくせい魔法まほう賜物たまもののようだ。



 しかし、その石槍を障壁しょうへきで弾き、時には被弾ひだんしながらも、人間達はプデスとの距離を詰めていき。



 ついに、届いた。



「やあああっ――――!!」

「ぬぅっ!」



 石槍を紙一重かみひとえかわし、プデスに手を伸ばすタタリタ。

 眼前のプデスは化身。その、生身では触れることは出来ない存在を、



 タタリタの手が、しっかりと捕らえる。



「ッッ!!? バ――――」

「届いたぞ――神に!!」



 吹き荒れる魔波まは

 気合のタタリタ。

 苦しげな声をらすプデスが力任せに彼女を引きがし、地面に叩き付けた。

 タタリタは直後飛来した石槍をなんとか回避し――――遠く離れ、戦場を一望いちぼう出来る高みに陣取るクローネへとテレパシーを送る。



「見つけたよっ! やっぱりあいつ――――近くで化身を操ってる・・・・・・・・・・!!」

「ッ!!!? まさか奴め、私の位置を逆探ぎゃくたん――――」

「行ってクローネ、クヲン!! プデスは――――あの一番低い雲の中にいる!!!」

「よしっ……! 飛ぶぞクヲン! 捕まってろッ!!」



 クローネは、しがみ付いたクヲンを抱き。



 神の下へと、空を跳ぶ・・・・



 地面を割り砕き、空気を引き裂く勢いでプデスの雲へと跳んでいくクローネ。

 勢いのおとろえぬ弾丸のような速さで迫る人間に動転したプデスは、槍を飛ばすことさえ思い付かない。

 客席には風が吹き付け、さながら二人と共に空を跳んでいるかのような演出が成される。



「ば、ば、バ――――バカなァ――――ッッ!?」



 プデスが眼前で手を組み。

 途端、障壁しょうへきがプデスを包んでいく。



 その障壁に、二人はよく見覚えがあった。



「ッ!! マズいよクローネッ!! あの障壁にこもられたら手が出せなくなる!!」

「くそ――あともう少しなのにッ……」

「――私を飛ばせ!」

「!?」

「早くッ!!!」



 一喝いっかつ

 クローネは考える間もなく、クヲンを抱えた腕を振りかぶり――――彼女を投擲とうてきした。



「届けェ――――ッッ!!!」

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