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 パールゥが語気を少し強める。



「ユニアみたいに、諦めたりはしないから」

「……それを今言って何のつもりだ? 本番中だぞ」

「別に。ここでし返す気はないよ。ただ言いたかっただけ」

「そうか」



 パールゥが去っていく。

 それを察知したかのように、薄闇の中をマリスタがやってきた。



「……改めてあのシーンはありがと! ごめん!」



 パチン、と小さく手を鳴らして合わせ、謝罪の意を示すマリスタ。

 一幕の中で、台詞セリフをトチった場面について言っているのだろう。



「ああしたことは誰にでも起こるだろ。次は気を付ければいいだけだ」

「そうだね!! 気を付ける!!! 切り替えた!!」

「早いな。もう少し落ち込め」

「どっちよ?! へへへ」



 薄暗いが、どこか顔を赤らめているようにも見えるマリスタ。

 第二幕に挑む気合は十分の様だ。



「……それに、あれで貸し借り無しになっただけだ」

「はい?」

「俺もお前に助けられたからな。……ありがとう、マリスタ。夕方の変なイベントのときは助かった」

「――――」



 闇の中で真顔になる少女。

 その顔に、どこかキスを終えた後のタタリタを感じた。



「――い、いいってことよ!!?」

「てっ――なんでなぐった今ッ」

「なっ、なんでも?!」

「ったく……照れ隠しも程々にしておけよ」

「分かってるなら理由聞かないでよ?!?!? ……あーじゃなくて、違う。こんな話をしに来たワケじゃなくてね」

「呪いならいつも通りだ」

「ちゃんとしゃべらせて?!?! 先読みされたら会話にならないでしょがっ」

「他には?」

「会話にならないでしょって!!!」

「お……おい静かにしろ。表に聞こえるぞ」

「ひをっ」



 珍しい叫び声と共に口をふさぐマリスタ。

 着込まれた軽装の鎧が、カチャリと音をたてた。



「……やれんの?」

「ん?」

「イグニトリオ君とのアクション。やれるのかってこと」

「やらなきゃ劇が終わる、二重の意味で」

「やる気なのね。うし」



 マリスタが短く拳を突き出す。



 無言のまま、その拳を軽くなぐった。




◆     ◆




 人間は、ほぼ全員が魔法を使うことが出来るようになった。

 勿論もちろん練度れんどに差はあるものの、ちりも積もれば山。

 更に巨大な戦力アップを果たしたタタリタとクローネの力も加わり、たった三人しかいない神を相手に、人間達は次第に優勢に戦うようになっていた。



 しかし、それも長くは続かない。



 神々は、人間のように食べ物や飲み物を必要としない。

 対し人間は戦いが長引けば長引くほど、兵糧ひょうろうの心配をしなければならない。

 限りある資源の下、限りある戦いを強いられるのだ。



 そして何より――――「何がどうなれば」戦いが終わるのか、全く見当もつかないということである。

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