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「……………………。キス」
――稽古中から、今この本番に至るまで。
このキスシーンに、
「……へ?」
あからさまな動揺を見せるクローネ。
対したマリスタは、こちらをロクに見ようともしない。
いや、練習に比べればいくらかマシになった方だが。
それにしてもたかが
「……魔法を使えるパートナーと、
耳まで真っ赤に染め、今にも泣きそうな顔でこちらを見上げてくるというのはどういう、その、アレなのか。
こいつがシャノリアに劣らぬ
出会ったあの日。
俺の肩で力尽きた日。
俺の前で泣き崩れた日。
事ある
そしてその顔は本当に、なんだ。
台本には無い。
恥じらいながらも真っ直ぐに想い人を見上げ、しかし戦いの中である今は思いを言葉にはせず、ただ目と唇で気持ちを確かめ合う――――そうした儚さと意志の強さを
結局マリスタは、ただの一度も筋書き通りにこのシーンを演じられぬまま、
「………………」
「っっっ!!!」
迫るクローネの唇を、ただ固まって受け入れた。
客席のざわめきが聞こえる。黄色い声援まで聞こえた。
触れたか細い両肩が、俺の手の下でビクリと
お
だがこれも台本の筋書きで、そしてシャノリアは
だからあたかも本物の口付けに見えるよう、二人の口の間にだけ物理障壁が
俺が
当時の俺の
〝ごめんなさい、圭。ごめんなさい――――〟
〝これがお前の結末だ〟
だってそうだ、
余談だが、このシーンのパールゥの机に伏せさせたのは監督と、なんとシスティーナの案である。一応、ウィザードビーツのライブチケットの件を至らぬ方向に導いてしまったことへの借りを返したつもりらしい。
光が舞う。
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