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「……魔法を、皆にも使える技術にしたらどうかと思うの」

『!!?』



 タタリタが、クローネまでもが目を丸くする。



 魔法を広く、民衆に技術として広める。

 そんなことをやろうとも、そんなことが出来るとも、二人はついぞ思わなかったからである。



 「英戦えいせん魔女まじょ」タタリタの戦いを、かげから支えた名参謀めいさんぼう

 タタリタに次ぎ、世界で二人目の魔女まじょとして名をのこす少女ユニア。

 少女のこの機転により、人間は神と互角の戦いを展開していくこととなる。



「ど、どうやってそんなこと出来るの……? 私達は、確かに神の言葉を理解することが出来るし、魔法のイロハも本能的にわかるような力をヌゥからもらったけど」

「ヌゥと同じことが出来るってことなのか? ユニアには」

「いいえ、でも……直感で理解できる神の言語を、人間の言葉に置き換えて書き記したり、教えたりすることは出来ると思うの。というか……二人も出来るでしょ?」

『…………出来ません』



 タタリタとクローネが少しだけ目を見合わせ、やがて視線を戻して答える。

 ユニアはここで初めて、自分の才能が、同じ魔女であるタタリタにも案外負けていないことに気付いたのだった。




◆     ◆




 ユニアは連日、羊皮紙ようひしに魔法の呪文ロゴスを書きめていく。

 その間タタリタとクローネは、ユニアに教えられた通りのやり方で人間達に魔法を教えていく。

 魔法を扱える者が、ユニアの書いた書物の数に比して増えていく。



 舞台端ぶたいはしで机に向かい、ひたすら魔法で羽ペンを動かし、書物に向き合い続けるユニア。

 彼女から少し離れたところで取りりの輝きを放ち、舞台を鮮やかな光で染めていく人々、と共に笑い合うタタリタとクローネ。



 きっと二人は、この時に急速に距離きょりを縮め。

 ユニアはきっと、この頃から感じていたに違いない。



 クローネはきっと、タタリタを選ぶ・・であろうと。



 場は移り変わり、人々は舞台裏へ。

 舞台には疲れから机にして眠るユニアと。



 互いを想う少女と少年だけが、残った。



「――ねえ、クローネ」

「ん? なんだよ、じっと見て」

「…………知ってる? 魔法には、もっとすごい力が眠ってるって」

「え?……『魔法に眠ってる』?」

「――そっ、か。やっぱり知らないんだ。ふーん、男女で差があるのかもしれないな、ヌゥから受け取った知識には」

「……何のこと?」



 片眉かたまゆを寄せるクローネの正面に、タタリタが立つ。



「……成程。どんな代償だいしょうがあるんだ?」

「え?」

「皆の前でも、ユニアがいる前でも話せないようなことなんだろ? 魔法に眠る力ってのは。違う?」

「え……えっと。あ、合ってると言うか、合ってないというか」

「ハッキリしないな。大丈夫だから言えよ、覚悟はできてるから。家族の墓前ぼぜんに誓ったあの日からずっと。さあ、タタリタ。その魔法には、どんな代償が必要なんだ?」



 ――――マリスタ・・・・が赤面する。



 「マリスタ」とえて言うのは、こいつが――

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