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「ゼタンは考えられぬと言った。賛意さんいを示した者もるにはったが、皆にんぜられた使命を果たすのみ。我等もまた、それぞれに役割を持って生まれでた存在ゆえな」

「……ではどうして……ええと……神様、は……」

「……『ヌゥ』だ」

「ぬ?」

「ぬ……ヌゥダ??」

「ではなくて。ヌゥ、がわたしの名だ。今まで名乗りもせず、あい悪かった」

「あ、いや、別に……私達の仲でしょ!」

「……がとう。……そう思うからこそ・・・・・・・・、我は他の神々のようにはなれぬのかもしれんな」

「え――」

「授けよう。柱々われわれの力を。そして見せてくれ。神に並んだ君達が、どのような道を歩むのかを」



 手をかざすヌゥ。

 途端とたん水蒸気があらわれ、飲み込まれる舞台。

 生徒たちの手によって上手くけ合わされた光と水が、そして遅れて現れた火の玉がやがて一瞬にして姿を消し、舞台は暗転あんてん、客にも役者にも何も見えなくなる。

 この闇の中での移動が、またネックだ。



 無論むろん、俺達にだけは見える工夫が、舞台上にはなされている。要所要所に客からは見えぬ光が引かれている。

 しかし、それもかすかに目印になる程度で――少しでもタイミングを誤れば、



「ぅっ?!」

「っ?!」



 ――このように、激突のを見る。



 今の声は誰だったか。急な叫び声で判断が付かない。

 ともあれぶつかった相手から離れ、怪我けがなどせぬよう前方を手探りしながら――――



「ひゃあぅっ!!??」

「!?!すまんッ」



 ――――何か柔らかいものに正面から触れ。

 秒でその正体を悟り、コンマで謝罪を入れた。



「ご、ごめん私もハケぐち間違っ――」

「とにかく裏にッ」



 聞こえるか聞こえないかの声でそう交わし、舞台セットの裏に引っ込む。



 ここからしばらく、俺の出番はない。



 神と人間の戦いを、コロス――――所謂いわゆる映画でいうエキストラのような、一人で名を持たぬ役を何役も演じ分けるような役回りの者だ――――が演じ、彼らを魔法を使いこなすようになったタタリタが率いて進む、といった内容のシーンに移るためだ。

 このすきに、俺も衣裳いしょうを替える必要がある。



 舞台裏には、勿論もちろん衣裳係は居ない。

 自分で着替えることになるわけだが――



「――――あ゛。もしかして、君……ここで衣裳を??」



 ――すっかり動転した様子のリフィリィ・フェルトニスが、暗がりにもわかるほど紅潮こうちょうした顔を引きらせ、貫頭衣かんとういの前を隠すようにして俺を見ているのは、非常に困る。衣裳的に前屈まえかがみなのも絶大に困る。



 ……マリスタやパールゥならともかく。

 もとい、あいつらでも最低の行為だ。

 恐らく俺はこいつの――



 ――――頭が、うずいた気がした。



「さ、さっきは悪かった」

「い、いやいやっ。私がっ、戻る場所を間違えたんだからっ」

「そ――そう言ってくれると助かる。じゃあその――」

「え?――――え、あ、ああああっ!! う、うんわかった! みっ、見ないっ!これで見えてないから!!」



 これまで見たことも無い程に顔を狼狽ろうばいさせたリフィリィがぐしゃぐしゃと銀の長髪ちょうはつを両手で集め、それで顔を隠してうつむく。

 演劇部としての自負もあっただろうが――元はマリスタが巻いた動揺の種だ、そう気に病むことではない。

 しかしホントに長い髪だ、システィーナといい勝負かもしれない。髪もむ――――



 閑話休題かんわきゅうだいして死ね。俺。



「……き、着替え終わったら声をかけるから゜っ??!」

「!? ど、どうしたのっ!?」

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