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「次のセリフド忘れした先生どうしようどうしようどうしようどどおどどど」

「おバカ台本確認しなさいッ!!」

「も、もう出番だよマリスタッ!!!」



 ……急に、訪れることになる。



 突如彼らの下に現れた白竜はくりゅうの正体。

 それは――――竜種へとその姿を変態へんたいさせていた、ゼタンら神々の方針に反旗はんきを翻した異端いたんかみだったのである。



「――わたしは、おぬしらにけてみようと思う」



 白煙はくえん



 三人の視線を刹那せつな染めた煙はすぐに晴れ――――目の前には、



「な――ッ」



 銀の長髪を迫力たっぷりに振り乱した、実技試験じつぎしけん前にシータ・メルディネスと小競こぜり合いを起こしたリフィリィ・フェルトニス演じる反逆の神、ヌゥの姿。



 竜が突然、貫頭衣かんとういを着た人間態にんげんたいに変化する。



 彼女が神であることは、誰の目にも明らかだった。



「……か、神――」



 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



 ?――――マリスタの、声が、聞こえない。



 ま。まさかこいつ。

 直前に確認した台詞せりふさえ頭からトンじまったのか――――「芝居だったのか、今までのこと全部! 私たちなんかをだましてどうしようっていうの!」だ!!



 思わずマリスタを見てしまう。

 見てしまってから、その行動も悪手だったと気付いた。



 役者の動揺は、思った以上に観客に伝わる。

 特にこのように、客席の近い舞台では尚更なおさらだ。



 なんて考えている暇は無い!

 不自然に間が空けば空くほど、ここまで順当に作り上げてきた物語の空気が総崩そうくずれに――



「下がってタタリタ! クローネ!!」

『!!』



 咄嗟とっさに前に出たのはパールゥ。

 しかし何をいきなり――そんな台詞は台本のどこに、も――――



 ――つなげてくれたのだパールゥは。



 続け。



「――芝居だったのか。今までのこと全部。俺達なんかを騙してどうするつもりだ!!」



 マリスタの動揺が伝わる。

 しかし、これで場はつながった。

 ファインプレーだ、パールゥ――――結果的にマリスタの出番を奪ってしまったが致し方あるまい。

 まったくヒヤッとさせる――だが後は――



「……はやるでない。この姿を見せたのも、お主達を信じるからこそだ」



 リフィリィの目にも一瞬動揺が浮かんだが、すぐにき消えた。

 流石は演劇部えんげきぶである。稽古けいこでも本番でも頼りになる奴だ。



「……信じる?」

「我は、天上てんじょうから見下ろしてばかりであった。短い時間だったが、お主ら人間と触れ合い、笑い合い、語りうた日々は、全て我にとって宝となった。――だから我は、お主らを。人間を信じることにする」

「私達に……味方してくれるってことなの!?」



 ようやく台詞を思い出したらしいマリスタが――タタリタが、俺とパールゥを押しのけて前へ――本来いるはずだった場所へと戻る。



 もう勘弁かんべんしろという気持ち半分、明日は我が身と思うのが半分。

 気を引き締めねば。



「味方はせぬ。ただ……常から我は、こう思っていたのだ。彼我ひがの間に争いが絶えぬのは、人間が神と同等の力を持っておらぬからではないかと」

「同等の……!」

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