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 暗闇の中、ロハザーらの舞台裏ぶたいうらでの働きによって、舞台中央の背景に墓標ぼひょうが追加される。

 十四歳になったタタリタは、無数に突き立つ墓の丘で泣き崩れていた。



 成長したユニアも悲痛の面持ちで彼女に寄りい、クローネはそれをただ見守る。



「……今度は、おじさんの番だった。そういうことだよな」

「クローネっ。今そういう――」

「あっていいのか?」

「――え?」

「こんなことが……ただ神の餌食えじきになるためだけに生まれただなんて、そんなバカげた話があっていいのか?」

「――――」

「父さん……父さん……ッ」



 激情に支配された二人にかける言葉を見つけられず、座り込んだタタリタの背に頭を預け、ただうつむいて途方に暮れるしかできないユニア。



 吹き荒れる怒りと悲しみ。

 のち湧き上がる反逆の火と、心底しんていくすぶる確かな絶望。

 そして適度に刈り取られる戦力と、神々が望むモノ。



 もう何度繰り返したか知れない、神への供物製造工程せいぞうこうてい



「……いっそ、やめちゃったらどうなのかな」

「はっ?」



 頭に血を上げたまま振り向いたタタリタに、ユニアは気後れすることなく告げる。



「神様に、逆らうの。そしたら、今迄いままでみたいなペースで供物くもつを集められなくなるわけじゃない? そうしたら――」

「――あいつらは私たちの心が湧き立つだけで、望むモノを手に入れる。今更戦いをやめたところで、あいつらは私たちの心を手に入れ続ける! 解ってるでしょユニアにも。変な気休めを言わないでよっ!」

「でもそれじゃあ神の思うつぼだよ!?」

「だとしても、戦いをやめるのは難しいよ、ユニア。俺達に心があるからこそ」

「……心が」

「大切な人を、幸せに生きられるはずだった未来を奪われて、皆怒りと悲しみに満ち満ちている。それにここで戦いをやめてしまえば、これまで死んでいった全ての人達は犬死いぬじにだと、そう考える人も出てくるだろう。その人たち全てを、俺達だけで止めようとすれば。――今度は、俺達の中で分断ぶんだんが起きる。そしてそれも、また神々の思うつぼだ」

「…………じゃあどうしたらいいの?」



 ユニアのほおを、押し込められた激情が伝う。

 タタリタが怒りに任せ、地に手を打ち付け続ける。

 クローネは苦しげに目を閉じた。



 どうしようも、無かった。



「……せめて、私達にも」



 神との間にある、文字通りの天地の差。



「私にも、あいつらと同じ力があれば」



 魔法を使える者達とそうでない者達。

 それは最早もはや、戦力差などとは形容し得ない。



「――神をたおせる力があればッッ!!」



 人である限り避けられぬ、「死」を克服こくふくしようともがくような、摂理せつりへの反逆とでも言うべき絶望感だった。



 故に。



『――――ッ!!?』



 彼らは、神へ近づく道を選ばざるを得ない。



「――――誰、なの?」

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