20
久しぶりに聞く、素のトーンのパールゥの声。
そんなもの、俺が
「それが分かれば苦労しない。でも……」
「でも?」
目を閉じる。
意識を内へ、呪いへと集中させる。
ケイミー、アトロの二人と戦った時。
あの時感じた、何にも
分かっていたことだ。
分かっていたことだが――
「――呪いはまだ、きっと生きている」
「!」
「だからこそ。……今度こそ、
「え……」
ほんの数時間前まで、呪いは完全に
何か
思い出せ。
あの時あの瞬間――痛みの呪いを押さえる条件が、まさに整っていたに違い無いのだ。
逃してなるものか。絶対に。
「大丈夫なの? もし劇の途中で――」
「ケイ」
声に振り向く。
なぜか役を持たないシャノリアが、舞台裏にやってきていた。
「? シャノリア、あんたは――」
「ん」
俺とパールゥに視線を送り、後ろで一つにまとめた、こんな暗い場所でもなお
シャノリアは、小さな拳を俺とパールゥの前に突き出した。
「……何の
「はいっ」
パールゥが、その拳に拳を合わせる……のを見て、俺にもようやく意味が分かった。
「ホラ。時間ないんだから、急いで」
「……あいよ」
拳を握り、パールゥに
と――シャノリアは急に拳を開いて、俺のこぶしをそっと握った。
パールゥの顔が険しくなったのが気配で分かった。
だが発しようとした言葉は、
「これは
シャノリアの強い
「……だから、発作が起こったときは。無理だと思った時は、必ず自分の身を守りなさい。みんながカバーしてくれる。つないでくれる。それを忘れないで」
「…………ああ。ありがとう、先生」
『!!』
一瞬きょと。としたシャノリアが、茶目っ気のある笑顔を浮かべ、俺の前を去る。
かと思えば、ほど近い場所にいた、別の生徒に向けて拳を突き出していた。
あれみんなにやって回ってるのか。
過ぎた
『本日は、「
ナタリーのアナウンスが鳴る。
開演五分前の合図だ。
視線をさ迷わせる。
探した人影はすぐに見つかった。
奴も視線を返してくる。
ギリート・イグニトリオは、笑っているようだった。
『間もなく開演いたします。もうしばらくお待ちください――――』
幕が、上がる。
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