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 ポカンとするチェニク。

 眉間にシワをよせるビージ。

 もっとも近くに居たロハザーだけが、俺に顔を寄せてきた。



「……思考過程スッ飛ばして手段だけ言ってんじゃねーよ作戦会議の場で!」

「お前達に頼むことを先に言ったまでだ。追って話すから座れよ」



 ロハザーが舌打ちし、ヴィエルナの隣に戻る。

 全員を見回し、俺は口を開いた。



「……ここだけの話にして欲しいんだが。さっきの意味不明なイベント前、俺が修羅場しゅらばむかえていた時に」

『しゅらば?!!?!』



 鬼のように顔をく男子生徒共。



「自分で言うなよ。修羅場て。イカレてんのかお前さんは」

「手っ取り早く伝わっただろう。ここには当事者も何人かいるから、詳しく知りたいなら勝手に聞け」

「さりげなく厄介事やっかいごとを押し付けないでいただけます???? ほんとに抜け目のない腹黒さですね貴方は」

「その時一緒に居た中に、一人その……見慣れない女が居ただろう。トルト」

「見慣れない女……? いたかいそんなの。ハイエイトよ」

「や……全然覚えがないスけど、俺には」

露出魔ろしゅつまのように巨乳を見せびらかしていた女だ」

『ろしゅつま?!!?!』

「黙りなさい野郎共!!!」

「居たな」

「居たぜ」

「……最低あんたたち……」



 ナタリーの一喝いっかつ、マリスタの毒づき。ついでにシャノリアやヴィエルナからもチクチクとした視線を感じながら、努めて無視して話を進める。



〝お前たちの喉元のどもとには私の刃が当てられていることを忘れるな〟



 …………進める。



「その女。リシディアの姫君だ」

『……は??』

「リシディア王国第二王女、ココウェル・ミファ・リシディア。教科書に写真も、時には名前さえはぶかれていることもある箱入り娘。それが彼女だ」




◆     ◆




「……黒じゃねぇかよ、それ」

「誰がだ? 王女がか、お付きの騎士がか? それとも両方か、後ろのもっと大きな存在か」

「や、そりゃあ……」



 ビージが黙る。

 以降は、誰もしゃべらなかった。いな、喋れなかった。



 皆、それぞれにこの情報――――王女が黒幕に一枚噛んでいるかもしれない、という情報――――を吟味ぎんみしている様子だ。



 一瞬の一撃でマリスタを倒した腕。

 このタイミングでのお忍び訪問。

 使った魔石ませき一致いっち

 そして、これを話したことで――もう後には引けなくなったということ。



 全てを話した。

 ゆえに――辿たどり着く答えに、そう違いは無いはずだ。



「……確証が、欲しい所ね。彼女たちが、襲撃者のボスだという」

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