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「それはお前の都合だ。信用に足る客観きゃっかんではないな」

「奴はプレジアを変えた。貴族と『平民』の争いを終わらせるキッカケを生んだんです。最後には自ら、僕ら・・の想いを引き受けて」

「クサい友情話はもうやめろ」

「これは友情などではありません。事実です」

「何が事実だと? 貴族と『平民』の争いは終わったか? なあ、バディルオン」

「――――」

「お前は、友人がやられたのを見て真っ先に『平民』を疑っていたな。どうだ、争いは無くなったのか? 貴族と『平民』の小競こぜり合いはもう起こらないと、それがアマセの成果だと言えるのか?」

「レットラッシュさん、僕は――」

「無くなっては、いません」



 ビージが静かに答え、



「テインツは『キッカケを生んだ』と言ったんです」



 テインツに向き直ろうとしたフェイリーを、更に答えて制止した。



「だから何だ? キッカケを生んだ、その証拠しょうこがどこにある? 今が口先で乗り切れる場面じゃないことさえわからないのか、バディル――」

「俺達です。……証拠しょうこはっ」



 力のこもり始めたビージの言葉に、フェイリーが眉をひそめる。

 無論、俺も。



「――――俺――――俺は。奴を殺そうとさえ思っていました。本当に。今だって本当はっ……クソほどいけ好かねえ奴だと思ってますッ。……ッでも、」



 ビージが拳を握り締め、ぶるりと震わせる。



「……死ぬべきは俺だった。力におごり名に自惚うぬぼれ、感情におぼれた俺だったんですッ……!」

「もういい。沢山だ。付いてこいアマセ。お前を拘束こうそくする」

「そんなことが言えるまでにッ!!!!」



 シータが、マリスタが「きゃっ」と小さく悲鳴をあげ、耳をふさぐ。



 ビージは砕けそうな程み締めた奥歯からゆっくりと力を抜き、開いた口から空気の塊を吐き出して、体のりきみをいていく。



「……俺はコイツのおかげで変わったっ。俺だけじゃないっ、テインツも!……他の奴らも、みんなだ!」

「黙れ。何度言っても同じだ、キッカケを得てプレジアが変った証拠など何も――」

「だったら証明しますッ!!」



 テインツが、フェイリーの前にひざまずく。

 マリスタ達が目を見開いた。



「こいつが信用に足る人物だと、絶対に証明します。この事件の解決をもってっ」

「話にならない。それで通るなら世に犯罪は存在しない」

「お願いしますっ! 私の――オーダーガード家の威信にけて、必ず証明してみせますっ!! お願いしますっ!! レットラッシュさんッ!」

「何を言――――っ!?」



 何かを発しようとしたフェイリーが口を閉じ、目線を移す。

 ひざまずくテインツの横。

 ビージ、ロハザー、ヴィエルナ――――そしてマリスタが、彼に倣うようにして跪いたのだ。



 流石さすがにトルトは顔を引きらせているだけだ。

 ナタリーなど、今にも吐きそうな顔をしている。



 ――そうだよな、普通。



「…………マリスタ・アルテアス」

「っ。……はい、」

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