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「……ああ、ある。そして話せない・・・・

「なっ……ケイ!」



 マリスタが難色を示す。

 お人好しめ。

 せっかくナタリーが一時的にとはいえ擁護ようごしてくれたのだから、大人しく黙っていればいいものを。



「……え? 何アマセ君、それって敵対宣言?」

「違う。今は、大人数おおにんずうに話すことが出来ないというだけだ」

「詭弁にしか聞こえないな。悪いが、あくまで話さないというなら、アルクスはお前を――」

「死人が出る。話せないのはそれが理由だ」

「――ほお。死人ときたか」



 なおも鋭いフェイリーの視線。

 まあ、それが当然だろう。

 だが、これはおどしではないのだ。残念なことに。



 ココウェルの騎士――アヤメは、貫いたマリスタの治療ちりょう治癒魔石ちゆませきを使っていた。だから今こそ、俺は奴らに確信に近い疑念を抱いている。



 だが、ここでココウェル達の素性をバラせばどうなるか。



 万事上手くいくかもしれない。

 素性が割れてしまった彼らは、大人しく王都に帰ってしまうだけかもしれない。



 だが、もし万事が上手くいかなかったら。



 果たしてそのとき、アヤメは――貫いたマリスタを、再び治療してくれるだ・・・・・・・・・・ろうか・・・



 そしてもし、襲撃者とアヤメが同類であったとしたら。

 襲撃者もまた、傷付いた者を再び治療してくれるだろうか。今回のように。



 そして、もしココウェルが襲撃の首謀者しゅぼうしゃだったら?

 あいつの刹那的な激情で、もし自棄やけっぱちな無差別の襲撃事件が起きたら?



 よしんば襲撃を鎮圧ちんあつさせたとしても、その後はどうなる?

 出涸でがらし王女とその配下達を手元に置いて、「プレジア」は一体、「リシディア」を相手にどのような交渉・・を繰り広げることになるのか。



 確認しなければならないことは山とある。

 慎重に動かねばならない場面も山とある。



 仮定が多すぎるままに議論を尽くし、下手に事態を進展させるわけにはいかないのだ。



「……それに、俺が話していない情報は、本来は別件べっけんなんだ。まだ、この襲撃事件に明確な関わりを持っていない」

「関わりがつかめてから話すと? 全てが終わった後でか」

「皮肉を言わないでくれ、フェイリー。……後手に回るつもりは無い。白か黒か、近いうちにハッキリさせるつもりだ。この件が襲撃に関わっているのか、いないのか」

「これまではっきりさせられなかったものを? だったらこうなる前にハッキリさせておいてくれよ」

「…………」

「味方をしてやれなくて悪いな。だが俺はアルクスで、お前とは初対面に近い。情報を隠す者を信用できないと思うのは普通のことだと思わないか?」

「その通りだ。そしてそれも十分解わかった上で、」



〝誰に何を話すべきなのか、誰を信用すべきなのか〟



「……皆に頼みがある。この事件、俺に預けてくれないか・・・・・・・・・・?」

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