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「あんたは学年も、上だしさ。今年で卒業して、プレジアからはいなくなっちゃうしさ。メチャメチャ頑張って、グリーンローブにもなっちゃうしさ。なのに私は実技でっ、レッドローブにおっこちちゃったしさっ」

「……ケイミー」

「んくっ……置いてかれたらどうしようっ、てっ。ひぅっ……あんたの目に私が映らなくなったらどうしようってっ、思ってさっ……怖かった。すっごく怖かったっ……!」

「お前……何考えてんだよ、そんなこと気にして」

「だから頑張ったっ。『頑張り過ぎだ』って言われ続けるくらい、頑張ったっ……!あんたに追いつき、たくって――――アトロにお似合いの、私でいたくって…………っっ!」



 ……煙が晴れていく。



 会場の中央。

 果たして、観客の目には――倒れ泣きじゃくるケイミーを抱き締めるアトロの姿が、しっかりと映った。



 俺を見てる奇特な奴も居そうだな。

 すみではあるが気絶した振りでもしていよう。少しだけ残念な気もするが。



「馬鹿。バカッ。んなことしなくたって、いいんだよ。そんな風に思わなくっていいんだよ! そんなことしなくたって、お前はずっと――――俺はずっとお前のそばにいるから」

「!!!」

「俺も、もっと頑張るから。ケイミー・セイカードに似合いの男でいられるよう頑張るから。だからこれからも、お前のそばにいさせて欲しい。好きだケイミー。お前が好きだっ」

「――――うん」



 誰からともなく、会場から拍手が巻き起こる。

 誰だ指笛ゆびぶえ吹いてる奴は。俺はそういう奴が嫌いなんだよ。



 ――バカ。笑うな俺。

 気絶の振りがバレるぞ。



「いや、バレてますからそれ。もう」

「……居たのか。ナタリー」

せたまま喋らないでいただけますか気持ち悪い。居るでしょそりゃ。そういう契約だったんですから。つか早く終われー」

「……無粋ぶすいだz――――」



〝そういう態度が不誠実ふせいじつだって言ってるんだよ〟



「――――、」

「常日頃から空気読まない貴方にだけは言われたくない。はぁ、ホント痛いから早く――」

「ありがとう」

「――、、――――――ぁ?」



 ヤクザもかくやという声でナタリー。

 こいつも額面がくめん通り、素直に受け取れないクチだな。俺とそっくりな……って、これまでの付き合いが付き合いだから致し方ないか。



「だから。ありがとう」

「二回言わなくても聞こえてますけど?。!」

「そうか? ならいい」

「…………何かあったんですか。今までとはキモさの質が違いますけど」

「別に。聞きたくも無いだろ?」

「はい」

「以上」



『――――ラヴバルーンファイトこれにて決☆着ゥ!!!!! 優勝を勝ち取ったのは、始まりから大して見向きもされていなかったかっこ実際私も紹介するのサボってしまいましたすみませんマジでかっことじな飛び込みカップル、ケイミー・セイカードエーンドアトロ・バンテラスペア!!! 実技試験じつぎしけん優勝?者をっ、愛のきずなが打ち破ったァァァァァァァァァァーーーーーーーーー!!!!!!』



 耳が割れそうな拍手はくしゅ



 少しだけ上げた顔の先で、二人は幸せそうに抱き合っていた。

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