8



 顔を赤らめるケイミー。

 その間に、俺はしっかりと立ち上がらせてもらった。



 ――魔波まはの圧だけでナイセストに敗れたという、ケイミー・セイカード。

 あまり人に言えたものではない手痛い敗北をこうむった彼女も――アトロと協力して、借りられる手は全て借りて、ここまで来たという。



〝どうして彼らがそんなに君を信用しているのか。今度は本当に、興味がいた〟



 ――お人好しだからに決まっている。

 俺にる所など全く無い。

ただただどいつもこいつもお人好しなだけ。

 俺なんかよりずっとお人好しで、どれだけ突き放しても周囲に現れて――そしてその関係をかてにして、皆それぞれに前に進もうとしている。それを知っている。



 俺は、きっと知らなった。



「ちょ、ちょっ……急にそういうこと言わないでよもー!」

「好きなのか。アトロのこと」

「言ったそばからッ?!………………まあ、そうだけど」

「ちゃんと言葉にしてくれ。聞きたいんだ」

「彼氏かっ!………………でもそうだよ。私はアトロが好き。好きっ!」



 ちょっと大きな声でケイミー。

 目を丸くして赤くなっているアトロ。

 何人かの聞こえたらしい外野がいや



 魔弾の砲手バレットを展開した。



『!!』

「行くぞケイミー、アトロ!!」



 掃射そうしゃ

 先と同じく、アトロが弾丸の相殺に動く。



「だったらこれはどうだっ!」



 打って出る。



 弾丸と、共に。



「なっ――」



 二人の下へ駆けながら弾丸を放ち続ける。

 低すぎる弾道の魔弾の砲手バレットは、その弾幕の中を進む俺にとってリスクしかないが――



「! くそっ、あいつ――!!」



 ――それも、奴らに近付くまでの話。



「アトロ下がって!!」

「馬鹿っ、あいつの狙いはまさに――」

「大丈夫だからっ!! 構わず撃って・・・・・・っ!」



 ケイミーが弾幕にる。



 弾丸飛び交う爆心地で、俺とケイミーはぶつかった。



「くっ……!!」



 アトロの弾丸は止まっている。だろうな。

 味方に当たるかもしれない弾に奴が遠慮していたのはさっき見た。

 あいつを封じ、一対一に持ち込むにはもうこの方法しかない。



「うっうぐぅっ」

「あああ――――!!」



 術理もなにもない拳を、蹴りを、ただただ届きそうな場所に叩き込んでいく。

 魔法と白兵を両立させながらの戦闘となれば、今の俺にはこれが限界だ。



 背に被弾。



「が――ぅ――!!」

「きぃっ!?――うぁ……!!」



 奴も被弾。



 上空からランダムに襲い来る魔弾の砲手バレットの雨の軌道は、術者でもその全てを把握はあくし切れない。

 そして恐らく――――この状況は、そう長くは続かない。



「アトロッ!!」

「!! ケイミー」

「私――――勝ちたいッ!!」

「!」

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