7



 ケイミーが駆ける。

 爆砕ばくさいした魔弾の砲手バレットの魔素の残骸ざんがいかすかに彼女の歩みを光らせ、まだ遠くにいるはずの彼女がやたら近く感じられる。



 アトロと俺の魔力量にそう差は無いような気もするが、不確定過ぎる賭けには出られない。

 しかし魔弾の砲手バレットの練度に関しては、間違いなく奴の方が上だ。

 一発一発に込められた魔力の充実度――実際、弾丸の速力そくりょくは上回られている――、そして威力。

 余程よほど丁寧ていねいに魔力を練り込んだに違いない。

 それは出力だけを上げた、魔力便りのパワープレイとはなるものだ。



 ――対応された、か。



 今出来ることの、何もかもに。



 弾丸を撃ち切り、ケイミーの拳を受け切る。



「――あんたのおかげだよ。アマセ君」

「……は?」

最下級レッドで頑張るあんたを見てたらさ。ああ、私は気負いと思い上がりだけで義勇兵コースこの道にいたんだなぁって思えたんだ。ティアルバーにやられて、そのティアルバーとあんたが戦ってるのを見て、目が覚めた。アトロもそう。あいつ、口癖みたいに『これじゃアマセみたいには戦えない』って言いながら修行してたんだから」

「…………俺が変えたのか。そんな風に」

「あんたしか言わなさそうな言い方だね、それ……でもその通りかも。ううん、その通りだ。あんたが私達を変えて、そんで……この二ヶ月、学祭の準備やら筆記試験ひっきしけんやら色々あったけど――私達なりに、将来をを見据みすえて自分をきたえ直したの。あははっ、もう関係各所に頭下げまくったんだから! 先生とか頭いい友達とか!」

「……そっか」



〝ケイはすごいよ。たった二週間で、私をこんなにも変えてくれちゃってさ〟

〝変な奴だよテメーは。こうして話してると……こころのよどみが抜けていく気がする〟

〝逃げて逃げて、今の私なの。だから今度、ちゃんと、向き合って強くなりたい。みんなと。自分と〟



「それに、一人じゃダメだった」

「一人じゃ?」



 拳の応酬おうしゅう

 やはり打たれ、吹き飛んだのは俺の方だった。

 またも地に背を付け滑り、倒れる。



「くっ……」

「うん、一人じゃダメだった。だから、アトロと一緒に頑張ることにしたの」

「…………」

「今だって、たぶん一人じゃあんたにここまで優勢に立ち回れてないと思うし……でも、アトロと一緒なら――私ら、プレジアでもちょっとした名コンビだよ! って、つもり。ていうか。へへ」



〝こういうのに出れば、あいつも少しは変わるかなって思ったけど〟

〝変えるべきはあんたの態度じゃないのか〟

〝お前は意図的に人の心をたぶらかしてもてあそんでる不誠実なクズ野郎なんだよ〟

〝どうして私に深く関わろうとしてくれないの? どうして私に深く踏み入ろうとしてくれないの?〟



〝正直君はもうダメなんじゃないかと思ってたんだ。――でも、君の周囲は全然そう思ってない人が多い。君の意志を理解し、信じている〟



 ――――それが、俺の「弱さ」だというのなら。



「――いいコンビだな。お似合いだ」


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