6



 拳闘けんとう

 真正面から小細工なしに打ち合うが、やはりことごとくケイミーに上回られる。

 ここまでくると天性の才能の無さを嘆きたくなるが……何を言うか、俺という人間の戦闘のカンはこれまでもこのような感じだったではないか。



 三週間ほどとはいえ、血のにじむような努力で得た実力へ、マリスタに二日で追いつかれ。

 ビージ、ヴィエルナ、テインツ、ロハザーには一度も、実力で勝てたことは無く。

 お膳立てを全てそろえてもらったナイセストにも勝てず、挙句あげくギリートらの助力で命を助けられ。



〝そら。お前はあの時・・・と一緒で、こんなにも弱い〟



 勝っていない。

 俺は一度だって、誰かにちゃんと勝ったことが無い。

 そして今、俺はまた負けようとしている。



〝俺はこんなに――――強くなったのにっ!〟



 ――なんて弱さだ。

 俺はそれさえ見えない程に、二ヶ月のブランクで思い上がってしまっていたのか。



「……ダメだな。つくづく」

「え?」



 力比べのように手を組み合ったケイミーがひとり言に反応しやがる。

 いや、こんな所でウジウジと脳内反省会をしている俺が悪いな。



「ケイミー」

「な、なに? 揺さぶろうったってそうはいかな――」

「強かったんだな、お前。最初からこんなに強かったのか?」

「え――」

「――胸を借りる・・・・・ぞ。お前達」



 ポカンとしたケイミーと正面から組み合ったまま体軸をずらし、左足で――――彼女の右足を後ろから刈り取る。



「きゃっ――――」



 遠い昔な気がする授業で習った付け焼刃やきばの柔道技――大外おおそとりを用い、ケイミーを地面に叩き付けた。



 のが間違いだった。



「ぬぐッ――!?」



 顔がぜる。



 アトロの放った魔弾の砲手バレットを正面から食らい、頭から吹き飛んで地に落下。

 大失敗な受け身などを取りながら即座に立ち上がる。

 ぼやけた視界には迫ってくる褐色かっしょくの少女。

 むを得ん――



魔弾の砲手バレットッ!!」

「ッ!」



 ケイミーが弾けるように後退する。

 ありったけの魔力を注ぎ込んだ魔弾の砲手バレットの弾幕。瞬転ラピドを使えないルール下では、これを超えてくることは不可能だろう。



 そしてこれだけ魔力回路ゼーレ酷使こくしするのも久しぶりだが、やはり呪いは作用しない。ここまで何もないと反動が怖くもあるが。これによって病状が進行しているかもしれないのだ。



 しかしともあれ、これで二人ともがひるんでくれればまだ勝ちの目は――



魔弾の砲手バレットォッ!!!」

「!!」



 ――俺など勝負にならない程の魔力の充実をもって放たれた弾丸が、俺の弾丸を片端から相殺していく。



 アトロ・バンテラス。

 俺と同じ・・・・……グリーンローブ!



「弾は全部撃ち落とす! 決めてこいっ、ケイミー!」

「アイアイサー!!」

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