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 アトロは典型的てんけいてきな「魔法使い」タイプ。今回に限っては魔弾の砲手バレットのみだが、奴のここ二ヶ月の伸び――――特に魔法実技まほうじつぎの授業分野に関してはズバ抜けていたと、マリスタが話していたのを聞いたことがある。

 それも手伝ってか、筆記試験だけでグリーンローブにも昇格している。



 最初に倒したペアと違い、どちらも戦いのイロハを知る義勇兵ぎゆうへい候補生こうほせい

 さて……どうしたものか。



「たあっっ!!」

魔弾の砲手バレットッ!!!」



 ケイミーに先んじた魔弾の砲手バレットを危なげなく回避し、再びケイミーと白兵はくへい



 右手で親指を握られた。



「っ、っ」

「ハァッ!」



 親指を握ったケイミーがそのまま腕を軽く前後に振り――――親指の関節が鋭い痛みと共に内側で鳴る。

 驚いて意識を取られたすきに主導権を奪われ、打ち出された両手で腹部を打たれて吹き飛んだ。



「っ……ごほっ、」



 詰まった呼吸を無理やり再開させ、大きく息を吸って腹の痛みをまぎらせる。

 辛うじて胸の宝石に至る拳筋けんすじは腕で塞いでいて狙われなかったが――これを破壊されては何を試すことも出来なくなる。祭りの期間中、唯一の合法的に戦闘を行うことが出来る場なのだ。



 ケイミーの手には、すでにマークは無い。

 つまり、その分思い切った戦いも出来るということ



「はぁっ……やれる。アトロ! 私だいぶやれるみたい!!」

「ああ、見てるぞ! お前ならやれる――この二ヶ月の修行の成果を見せてやれ!」

「――おうッ!!」



 ――それは実力か、はたまた揺らぎ・・・か。



 だが分かる。

 少なくとも今、こいつは。



「――強いな」



 三度みたび接近。

 こちらの攻撃を攻めの起点に転換てんかんし虚を突き、連撃へつないでくる。

 ならば奴の手に余るほどの大技を繰り出してやればペースを乱せるのだろうが――如何いかんせん、この戦いはルールのあるイベントだ。

 大技は望めない。

 つまり――



「らあっ!」

「!!」



 下から両腕の付け根をとられ、思い切り上に広げられる。

 後ろに倒れていく俺とケイミー。

 眼前で大きく振りかぶられたケイミーの頭。

 無防備にさらされた胸の宝石。



「もらっ――――う゛っ!」



 足を上げてニーキックを放ち、つっかえ棒の要領でケイミーの頭突きを防ぐ。



「ここだっ!!」

「!」



 直後頭上、俺とケイミーのわずかな隙間すきま魔弾の砲手バレットを放つアトロ。ケイミーの背後からの放射状ほうしゃじょう跳躍ちょうやくの中、こんなせまい間を狙い打てるのか。大した精度だ、だが――

 足で発条ばねを作ることは出来ないが――辛うじて地に着いていた両足で飛び、魔弾の砲手バレット射線しゃせんをケイミーの背でふさぐ。



「あっっ、」

「う――きゃああっ!?」

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