3

「俺が知りてえよ、そんなの……アマセ周辺の奴と違ってくわしく知ってるワケじゃねーし。あんたの方が詳しンじゃないのか」

「さあ。死ぬ寸前ってことくらいしか」

「そんな証拠ないでしょッ!!」

「わっ?! き、急に叫ぶなってっ」

「はは。ヒッシダネーステキダネ」

「嘲笑しながら言うなよあんたも!」

「ははは……まあそう怒らないで。精一杯ねっとり鑑賞かんしょうしてあげようよ。今後一生出会えないかもよ? あんな表情の彼女」

『彼女?』



 ロハザーとパールゥが声を揃え、ギリートの指を追う。

 指し示された先には――――見たことのない顔で呆然と立ち尽くして圭を見つめるナタリー・コーミレイの姿。

 ロハザーが少しだけ興奮気味にまゆをひそめた。



「……悪趣味だがそうかもしれん」

「……そう、だけどっ……」

「でしょ? アマセ君もそりゃ病気のことがあるから気になるけど、一番の見物みものはアレだよ。この状況で一番動揺してるの彼女だからね、たぶん。勝ったらキス……申し訳ないけど笑い止まんないわ――――さあ、」



 ギリートが恍惚とさえ形用出来そうな笑みを浮かべ、笑う。



「どうなんのかなっ。この勝負っ」




◆     ◆




 打って出たのは圭だった。



 弾丸を付き従えるようにして飛び出した圭に、ローブを脱ぎ去り同じく地をったケイミーが組み付く。

 すぐに圭は弾丸をケイミーとの間に発生させ距離を、



「せいっっ!!」



 ケイミーが両足で飛んだ。



「っ!」



 爆発。

 顔面に飛来した刺突しとつの如き蹴りを腕で防ぎ、爆風で後退する圭。



「ふふっ――ってきゃあああっ!?」



 同じく爆風により宙で後退したケイミーの――スカートが爆風でぶわりとめくれ、必死で前を押さえた彼女はその純白をアトロの眼前にまざまざとさらし、着地した。



「み――みたっ!?」

「みみみみ、見てない見てない!!!!」

「顔くらい取りつくろいなさいよ変態!!!!」

「バッカ、こっちに気ィ取られてる場合じゃ――」

「そりゃそうだけど――ってきたきたっ!!」



 再度交戦するカップルひとつとカレシがひとつ。



 その様子を、ペアのカノジョは思考停止のまま眺めていた。



「あ、あの……ケイ、さん……?」



 殴られたあとがやけにうずいて痛む。



〝お前なら信用できる〟



「――どういう、意図で戦ってるのですか、あなた。それ……」



 無意味なセリフがやけに頭に響く。



〝これきりです。これ一度だけ許します〟



 あのとき首元から感じた熱が、吐息といきがやけに生々しく思い起こされる。



「――――勝ったら、」



 ナタリーは思う。



 はて。



「勝っちゃったらキス、なんですけど…………」



 果たして私は以前から、こうも少女だっただろうか、と。




◆     ◆




 前衛ぜんえいケイミー、後衛こうえいアトロ。

 ケイミーは意外と肉体派のようだ。こいつの実技試験での試合は見れずじまいだったから、戦闘スタイルを知らなかった。なかなかの動きをする。

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