第44話 心結ぶキズナ
1
「き……!?」
「キス……って言ったね、今。司会者の人」
マリスタは目玉をひん
「か、書いてある……!! メッチャ小さい字で、一番下に……!!」
「確信犯だな。ひどいイベントだ」
「公開処刑じゃんこんなの!!!! 負けてよかった!!!!」
「俺は別にどっちでもよかったけど」
「そういうこと人前で言うなパンチ!!!!」
「いて?! わ、分かったからそうポカスカやるなって」
「グルル……って、あれ?」
はた、とマリスタが動きを止める。
その視線の先には、ケイミー・アトロペアと
「…………あいつ、なんで
「……案外好きだったってことなんじゃない? 彼女のこと」
「――――」
「というか、いつになく
「――わ、分かんないよ……病気はどうしたの? どういう展開なのよ、ケイ――――って」
そんな、不安げに圭を見守るマリスタの横に、よろよろと歩み寄ってきた人物――シャノリアは圭の姿を視界に
「しゃ、シャノリア先生? 大丈夫ですか?」
「……大丈夫じゃない、かな。胃に穴が空きそう。何を考えてるのかな、あの子は。命に関わる病気で……何かあってからじゃ遅いのに……!」
「そ――そうですよねっ。ザードチップ先生との話は終わったのに、あの体でどうしてまだ戦おうとしてんだろうあのバカはっ」
「助けなきゃ……」
「え?」
「何かあったら助けなきゃ。私が……」
「せ――先生?」
どこか遠くを見るような、余裕のない表情を浮かべる先生に、マリスタは少しだけシャノリアの顔を
シャノリアはそれにも気付かない様子で、背を向けて立つ少年に視線を送る。
数歩後ろに立っていたトルトが
シャノリア自身、どうしてこんなに不安であるのか
自分の手が届かないところに、もしかすると命が危ないかもしれない人がいる。
それが、今回に限り――どうしようもなく、彼女をいてもたってもいられない気持ちにさせるのである。
手に
それが役立つかどうかさえ定かではないのに、それでも彼女は用意せざるを得なかったのだ。
(――――私は)
いつからこんな気持ちだっただろう、とシャノリアは思い返す。
少なくともこのイベントが始まった当初は、こんな思いつめた気持ちにはならなかったはずだ、と。
試合開始後。
圭とトルトが戦い始めたのち。
パールゥが、ナタリーが、マリスタが脱落したその時。
(――――マリスタが脱落したとき)
体とはかけ離れた意識の奥底で、彼女はキッカケを探り当てる。
床に落ちたマリスタを見たとき?
マリスタと黒い女性との間で、まぶしい光が弾けたとき?
マリスタが戦っていた女の子が叫んで、
(――――私の心臓を、その音波で打ったとき。)
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