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「ああいや、なんでもっ! さーてさて、もうこの鬱憤うっぷんは知り合いのチームに勝ってもらわなきゃ晴れないなぁっ!」

「…………まあ、お前が大丈夫ならいいけど」

「生き残ったチームは誰でしょうねぇ? ケイたちと? シャノリア先生たちと? あとは――――あれ」

「どうした? あっちも知り合いか?」



 サイファスの問いに、マリスタは目をぱちくりとさせて応えた。



「あ――うん、知り合い、だけど…………参加してたの、あいつら」




◆     ◆




 ……結局、さっきのは何だったのだろうか。

 心臓を直接叩かれたような衝撃。力を感じた方向を見てみれば、そこに居たのはあの出涸でがらし王女。

 しかしそれ以後は何の変化も無く、ただ相討あいうって、マリスタとココウェルは共に会場を出ていった。

 気のせいだったのだろうか。だが、それにしてはいやにはっきりとした違和感だった。

 しかし、何より不可解ふかかいなのは――



「……そろそろいいか? あいつら出てったしよ……俺もひまじゃねぇんだが」



 ……この男、トルト・ザードチップはあの力を感知出来ていないらしい、ということだ。

 こいつには、俺がただココウェルとマリスタの戦いに注目していただけのように映っているようだ。

 暴言を怒鳴り散らしていたその迫力たるやすさまじいものがあったので、俺以外にもココウェル達を見ていた人間は多い。

 俺と同じ感覚を味わっていた者を探すのは困難だろう。



 ……一旦置こう。

 今はもっと大切な――すぐにでも原因を探求すべきことがある。



「トルト」

「あん?」

「もう一度、俺と戦ってくれ」

「……いや、戦ってくれっつったってお前」

「言ったろう。『痛みの呪い』の発作を感じなくなった。まったくだ。今ならもっとやれるかもしれないんだ」

「『かもしれない』だろ? そんな低い可能性にけられねーよ。今回はここでしまいにしとこうぜ」

「っ、これまでのしずまり方とは違うんだ、感覚が。頼むトルト、一度だけ――」

「やだね。終わりっつったら終わりだ。『痛みの呪い』食らって普通に暮らしてんのはお前さんだけ、つーことはこれから何が起こるかもわからねぇ体だ。感覚が違うっつってるがお前さん、もしそれが呪いの第二ステージだったりしたらどうすんだよ?」

「それはっ……」

「お前さん自身の体のことだろ。失敗したからって替えは利かねぇ、俺達教師がサポートしてやれる問題でもねえ。若気の至りで後先考えず突っ込むにはちとハイリスクすぎんだよ、自覚しとけ。……つって、き付けた俺が言うのもナンだけどよ。悪かったな」

「トルト」

「それに――俺が許しても、あの方・・・はもう許してくれそうもないぜ?」

「え」



 ちょい、と後ろを指されて振り返り。



 顔を、バチンと両手ではさまれた。



「も゜っ!?」

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