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 ――憎さが目をふさぎ。



 マリスタは、ココウェルがそれまでとは別種の・・・怒りをともしたことに気付かない。



「あんたが王様じゃなくてよかった、って言ったの。もしあんたが王様で、国を動かす政治に関わってる人だったらと思うとゾっとするもの」

「――――黙れ、」



〝どの本を見ていても、お前の写真だけは掲載けいさいされていなかった〟



「――ああそっか、わかった。分かったよ。どの本にもあんたの写真がってなかった理由。恥ずかしいからだ」

「やめろって、」



 すりつぶされたような声で目を引きしぼるココウェル。

 それを目にしてなお、彼女の口は止まらない。



「『こんなのがリシディアの王族なんだ』って、そう思われるのが嫌だからだ。だから写真を隠した…………そうして誰の目にも止まらなかったから、あんたがこれだけ騒いだって誰も気付かない。あんたが王女様だなんてことは」

「やめろって!!!」

「あれ、でもちょっと待って? 確かリシディアの王族って今――――王様と、王女一人以外は死んじゃってるって教科書に書いてあった、よね」

「うるせぇっ! うるせぇっっっ!!!!」

「――――うわ、嘘。あんた、このままいったら自動的に次の王様ってこと?」

「――――ッッ――――」



 震えるほどに顔を怒らせ、ココウェルがマリスタを見る。

 マリスタはその姿にどこか見覚えを感じ溜飲りゅういんが下がるのを感じながらも、それでも口を閉じることは出来なかった。



「……ヤバいでしょ、それ。仮にあんた――いや、あなたが私より年上だったとしてさ。そんな状態で、国民みんなに顔も知れてなくて、人望もなくって。……私でもわかっちゃうんだけど、解ってる? 潰れない?・・・・・ この国・・・

「…………………………」



 ――ココウェルは口を閉ざし、ついには黙ったままうつむいた。

 れ下がった両手は、今につめが食い込んだ肌から血が流れそうなほどに強く握られ、力のこもった呼吸はその小さな体をわなわなと震わせている。



 マリスタはようやく、その姿をちゃんと見ることが出来たように思えた。



「……私が言うのも、何だけどさ。もうちょっとどうにかした方がいいよ。王様だってもう結構お年でしょ? もうちょっと、大人にならなくちゃ――」

「――やがって」

「――え?」



 マリスタが首をかしげ、聞き返し。

 ココウェルは、これまでにないほどの殺気を込めて、彼女をにらみつけた。



「分かった風な口を利きやがって――――!!!!!!!」



 ――――世界が鼓動こどうする。



 異常な怒気をはらんだ魔波まはが、音速に空気を伝っていく。



「……これだけ言ってその反応?」



 だが、マリスタは気付かない。



 王女の発する異常な魔波を、感知しない。



「ほんっとどうしようもないバカね、あんたはッ――――!!」



 マリスタが再び拳を握り、ココウェルへ向かう。

 ココウェルはおびえのめしいた眼光を彼女に飛ばし更に顔を怒らせ、



「殺す…………喰い殺して・・・・・やるッッ!!!」

「ッ!?」

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