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「私を勝手に貴女の物語の悪役にしないでいただけます? 決着も何も、私はあなたと戦ってなんていませんよ」

「何を……言ってるのっ」

「聞こえませんでしたぁ? 二度言わせないでくださいよ面倒な。……貴女なぞ眼中に無いと言ってるのですよ。私は貴女の足止めさえできればそれでいい。ついでに祭りの間、二度と立てないようにできればもうけもの。その程度なのですよ」

「――――――、」

「そしてそこのカレシさぁん?」

「!」



 ナタリーの猫なで声に、ロハザーが嫌そうに反応、「俺のことか」と言わんばかりに自分を指差す。

 ナタリーはニコリと笑った。



「貴方確か、仕事中じゃありませんでしたっけぇ」

「! おめ、なんで俺らのシフトまで知って――――」

「あっやっぱりそうだったんですかぁ? カマかけてみて正解でした~♡」

(野郎……!)

「どうしましょうかねぇ、これって上にチクれば貴方の評価……ローブカラーにも関わってくるお問題になりませんかねぇ」

「っっ!!」

「――!? はっ――ハイエイト君ッ!!?」

「怖えー目で俺を見んなっ、大体俺はあんたに協力するなんて言ってねーだろが!」

「解ってるから――戦わなくていいからそこにいてよっ!?」

「ベージュローブのハイエイトさんかぁ、まあその後の反応も含めて一見の価値ありかもしれませんが、どうですかねぇ、ネタ的に需要じゅようはありますかねぇ」

「ハイエイト君!――っていうかナタリーッ!!!」

五月蠅うるさい、二度は言わない。さあ職務怠慢ハイエイトさん、さっさと胸の宝石を破壊して去ってください。邪魔です」

「…………」



 ――ロハザーは片眉かたまゆを寄せ、ニコニコ顔のナタリーをにらむと、大きく息を吸い。



「――組むぞ、パールゥ・フォン!」

「は?」

「――え?」

「手ェ組むんだよ。このいけ好かねぇ猫かぶり女に、一発ギャフンと言わせるためにな!」

「な――」



 パールゥが目を丸くし、丸眼鏡の向こうからロハザーを見る。

 彼は眉と鼻にしわを寄せてナタリーを見たのち、パールゥを見て口元をゆるませた。



「……あ、ありがとう」

「礼なんざいらねー、目的は一緒だ。俺もあいつは前から気に入らなかったからよ。……だが参戦はしねぇぞ」

「?」

「女子供はなぐらねぇ。だから見ててやる、ここで・・・。俺の分までそいつをブッ飛ばせ・・・・・

「…………もちろんだよ」

「あ、やっぱ今のウソ。手のマークをブッ壊してやれ、だわ。今のあんたじゃ正直殺し……」

「はぁっ??」

「や、やり過ぎてたら止めるぜってことだよ!」

「……へえ。ベージュに落ちようが構わない、ということですか。私が容赦ようしゃするとでも思ってるのですかねこの鳥頭とりあたまは。お望み通りベージュに落として差し上げますから存分に堪能たんのうしてくださいね」

「勝手にしろ。ただ一つ言えんのは、俺はテメーの口車に乗せられてホイホイ動きゃしねぇってことだけだ」

「…………」

「あーそうだ。あともう一つ、ついでに言っときてーことがあんだがよ」

「ハァ。魔弾のバレ――」

「おめーさあ。ぶっちゃけ、まんざらアマセが嫌いってワケでもないんだろ?」




「――――――、は?」



 ナタリーが、詠唱えいしょうを途切れさせた。

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