6



 掃射そうしゃ



「くうっ……!」



 かがみ、両手で頭を押さえて回避するパールゥ。

 辛うじてナタリーから視線を外さないようにしつつ、打球のような速さで飛んでくる砲弾からほうほうのていで、逃げまどう。



 負けじと魔弾の砲手バレット詠唱えいしょう、ナタリーにお見舞いしようとはするのだが、彼女はすずしい顔でパールゥの弾丸を自らの魔弾の砲手バレット相殺そうさい、それ以上の弾丸を放ってくる。



 圧倒されている。

 人は私の状態をそう言い表すかもしれない、とパールゥは思った。



「どうして――ナタリーだって魔術師コースなのにっ」

「だから何です?」

「は……!?」

「当たり前でしょう、最低限の自衛じえいの手段を持つなんて。持たない貴女がどうかしている。だからこそ今、貴女は――――この局面で無様に逃げ回ることしか出来ないんですよっ☆」

「っっ……!」

「結局口だけだったようですねぇ、貴女のケイさんへの執着も。今後一生嘲笑してあげますから、精々ご自分の力不足に泣きを見続ける人生を送ってくださいな。色ボケ女☆」

「――――――言わせておけばっ!!!」



 もう勘弁かんべんならない。

 数発当たろうが構うものか。



 足をナタリーへ向ける。

 装填そうてんしたはしから魔弾の砲手バレットを撃ちながら、パールゥはおくすることなくナタリーをにらみつけ――



 ――――それは彼女の姿が見えなくなるほどの、弾幕だんまくだった。



「ぁ――――」



 とっさのことだった。

 今まで出したことが無いくらいの大声と放出魔力で魔弾の砲手バレットを展開。

 無我夢中で射出し、明らかに数で負けている弾幕に真正面からぶつけた。



 爆音。

 衝撃。

 浮遊感。



「っっ!! ぁ――――!!」



 浮遊感を失った体が地面に叩き付けられるまで、そう時間はかからなかった。



 打ち付けられた体全体ににぶい痛みが走る。

 でも止まっていられない。立ち上がらなければ、すぐにでも。



 前後も解らず立ち上がり、白煙はくえんの中にナタリーを探す。



 彼女と目が合ったのは、同時だった。



「――――」

「っ――――」



 怜悧れいりな瞳。

 その中に、怒りにとらわれた自分が映るようだった。



 あの罵倒ばとうさえ、ナタリーのさくの内。

 おどらされていたのだ。どこまでも。



 弾丸が装填され、ナタリーの背後で回転する。

 数はさっきより、ずっと少なかった。



「――――どうして撃たないのっ」

「はい?」

「どうして今撃たなかったのかって聞いてるの! 決着付けたいなら今の――」

「別に?」

「――――は?」

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