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「無いですよ」

「ケイ君とペアになっ――――まだ話の途中だったんだけd」

「まだるっこいの止しましょうよ。結論だけで成り立つでしょう。私と貴女の会話は」

「……そんなに私が嫌いなの!?」

「嫌いですよ。マリスタにあだなすやからは皆。そして――――貴女のように公共の福祉・・・・・おかす輩は更に嫌いです。虫唾が走る」

「簡単に言いなよ頭悪いな」

「あらあら理解出来ませんでした? 公的な場で私的に騒いで滅茶苦茶めちゃくちゃやる奴は死ねって言ったんですよ」

「暴言しか出ないんだね」

えてひねり出してるのもお分かりになりません?」



 体は沈黙。

 目は殺戮さつりく

 視線だけが互いを貫き、殺し合う。



 引きしぼられていく眉根まゆねが、するどさを増す眼光が。

互いのボルテージを、まるで火山活動のようにゆっくりと煮えあがらせていく。



 打って出たのは、パールゥだった。



魔弾の砲手バレットッ!」



 パールゥの両肩の上で、魔素がゆっくりと琥珀色こはくいろの砲弾を形作り、回転し始める。

 なおも表情を変えないナタリー。

 奥歯を噛みしめ、パールゥは――魔波まはで前髪をらした。



「いけっ――」

「遅過ぎますね。あまりにも」



 太い射撃音。

 それを耳にしたときには、



「ッ!うっっ!?」



 ナタリーの放った魔弾の砲手バレットは、パールゥの頭をかすって背後に抜けていった。



「……!!」



 久しく感じたことのないにぶい痛みが、右側頭の上を襲う。

 拳骨げんこつ。とっさに頭をらしたことで何とか直撃はまぬがれたものの――掠っただけで、この痛みなのか。



「そりゃそうですよねぇ。撃ち慣れてるわけないですよね」

「っ……無詠唱むえいしょうで……!」

義勇兵ぎゆうへいコースでないとはいえ、魔弾の砲手バレット魔術師まじゅつしコースでも習うものでしょう。詠唱破棄えいしょうはき出来る程度で何とかなると思ったのですか? ちょっと危機感ききかん足りないのでは~?☆」

「っ……!!攻撃魔法こうげきまほうは苦手なのっ! 私は戦いが」

「いや何言っても遠吠とおぼえですから。戦いのこんな場まで出てきておいてソレって。馬鹿が」

「……っっ!!」

「驚いてましたね、たった一発の弾丸が掠っただけなのに、って顔で。当たり前でしょう。魔弾の砲手バレット威力いりょく英雄の鎧ヘロス・ラスタング下でのパンチ一発に匹敵ひってきするのですよ? 身体強化無しハダカらったら鼻っ柱ヘシ折れますからね。まあだからって容赦ようしゃはしませんが」

「――――っっ!」



 ナタリーの背後に、複数の弾丸が現れる。

 魔素まそと空気がこすれる音が、やけに大きく聞こえ。



 少女は、息を飲んだ。



「――いい機会です。折れる所を全部折って、これで貴女の祭りを終わりにして差し上げましょう」

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