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「私の質問に答えてないよナタリーっ」

「は? 答えましたが?」

「報道活動中だからって、どうして正確にケイ君の居場所が割れたのかって聞いてるの!」

「偶然ここにいました。騒いでる声が聞こえたので駆け付けました。はい終了。他に質問は?」

「偶然? 広いプレジアで偶然第二層に居て偶然この辺を歩いてて、偶然この騒ぎだけ聞きつけてやってきたってこと?」

「え……あ、や。それはそうですけど」

「嘘が下手だね、ナタリー。どうせいつもみたいにアマセ君だけにくっついて動いてたんでしょ!?」

「人聞きの最悪なことをおっしゃらないでいただけませんかねちょっと最悪なことを。なんで私がこの天然たらしジゴロスケコマシエセクール長便名実めいじつともにクソ野郎に密着取材なんてしないといけないんですか」

「わたしを差し置いて話すな下民共がッ! お前らはケイの何なのかって聞いてんのよ」

「なんでもありませんが」

「私が先に訊いてるんですっっ! なんなんですあなたっ!!」

「おい。おい。みんな見てるって。おい」

「そんなに聞きたいなら教えたげるわよっ!!!」

「ッ!? おいココウェル、お前はおしのムゴグッ?!?!」



 視界を覆う芳香ほうこうの闇。

 ばにゅん、とまたも押し付けられる巨大双丘きょだいそうきゅう



 ダメだ。とりあえず素数だ。素数を数えろ天瀬圭あませけい

 この上発作なんて起こしたら、この事態はもう――――



「ちょっと待ったぁっ!! 皆さんっ、今すぐ私達の護衛対象・・・・から離れなさーいッ!!!」

「ちょ――セイカード引っ張らないでってばぁ!」



 ――――――――この、



「いいこと!? この男、ケイは私の――」

「ケイっ!! これどういう状――」



 ――――――――事態は、



下僕げぼく!! 奴隷になったのっ!! ケイは私のモノなのよ!!!」

『――――――――!!!?!?』



 ――――――――もう、誰にも止められない。



「げッ――」

「どっ――!?」

「――――」

「――――あ?」



 三者三様、ならぬ四者四様よんしゃよんように驚愕の表情を見せる少女達。

 所有権を誇示こじするように俺にしがみ付くココウェル。

 素数を六百四十一まで数えた俺。



やってる場合か。



 どうすればいい?どう乗り切れれば最善だ?誰が突破口になる?俺がこの場から逃走すれば?いや中立国を失えば対立国は全面戦争になるし大体事ここに至ってまだアヤメがこいつらを殺しに来てないのは奇跡に近――――



「げげげげ下僕げぼくてどういうことよケイッ?!?!あんた今度はなにしてその子をたぶらかしたの!!!」「ええっっ?!アマセくんってそ、そういうことをする人だったんですかっ?!」「とりあえず離れてよ! ケイ君嫌がってるでしょっ!?」「うっ!?き――気安く触んなボケ!!」「気安く触ってるのはあなただからっ!!」「(ただただフラッシュをく音)」「まっぶしいなお前は誰に許可取ってってんだバシャバシャと殺すぞッ!」「(フラッシュが止み録画に切り替わる音と光)」「ああお前っ、やめろって!!!」「?!ちょっと大丈夫なのケイ意識を保ちなさい!!自分の思考に逃げてる場合じゃないでしょまさか発作!?発作なの!?」「キモい顔ですねー」「ナタリーも見てないで助けてあげてよっ友達なんでしょ!?」「御冗談ごじょうだん。なんで私がコレの友達ですか」「お前らわたしを差し置いて話をするなって!!!ケイはそもそもわたしのだっていってんだろが手ェ離せこのっ!!」「たーーーーー?!?!?! っ、あんたねぇ! ガキでもないのに人様にみ付くとかどういうことなのよこのニセ王「ぎゃああ言うなボケェっ!?!」「?ニセ――「話し合いの場を持とう!!!!!!!!!!!!!!!!」



 ――――全ての手を振り切り、両手を大きく開いて四人をせいする。

 かつてここまで大声を出したことがあっただろうか。いや無い。

 無いが、最早これ以外にこの場を、今後を乗り切るさくも無い。

 思考回路はショート寸前。

 今すぐ一人になりたい。



 つかもう嫌。

 とにかく嫌。こいつら。



「は――話し合いって」

「喋るな!!!……喋るな」

「に、二回言わなくても……」

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