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「僕らが解決する。奴らの正体を暴いて、正義の鉄槌てっついを下してやるんだ。貴族の――いや、プレジアの名の下に」

「クッサいセリフだわね……てか、あれだけあっさりやられておいてよく言うわ」

「いちいちカンに障る言い方するな君は……でも、その通りだ。一人で挑んで不意を打たれた。でも今度は違う。一緒に戦う仲間がいる」

「だからその仲間が敵かもしれないって言われてるんでしょ今。何を大前提だいぜんてい忘れてボケたこと言ってるのかしら」

「君はアルテアスさんを疑うのかい? メルディネス」

「……は?」

「チェーンリセンダさんや、テイルハートさんでもいいよ。君は彼女らも、敵かもしれないって思うの?……言ってはなんだけど、その程度のきずななの?」

「ッ!! ――」

「そうだよね。僕もそうだ」

「――なんですって?」



 沸騰ふっとうしたシータの血液が、行き所を失くして彼女の体内をモヤモヤとさ迷う。

 テインツは少しだけ笑った。



「どんな状況でも、信頼できる仲間はいる。僕はそいつらを信じて、これまでもやって来たんだ。だから、疑う前に信じることを考えようよ。その方が、ずっと気安くもある」

「…………」



 シータに返す言葉は無かった。

 友人たちのことを思えば、テインツのセリフはまったくもって正論であったからだ。

 先程、リアも言っていた。疑おうと思えばどこまでも疑えてしまう、と。



「……勝手にすれば。私達一般人の犠牲ぎせいをせいぜい少なくしてみせてね」

「ああ、任された。今度こそ君を守ってみせるよ」

「…………皮肉にくらい気付く頭を持つべきだわ」

「持ってるさ。持ってる上で無視したんだ。君の口の悪さは生来せいらいのものみたいだからね」

「……減らず口」

「お互い様だよ」




◆     ◆




「待つわけないんだよなやっぱな~~~~~あいつが私達のミーティングなんてさーーー!!!」

「まったくですねぇ! さすがにマジで私達をほっぽって姿消しちゃうなんて思わなかった! 人でなしー!」



 ぎゃあぎゃあと騒ぎ立てながら人混みを進む、一つ結びの赤髪あかがみとドレッドヘアの黒髪。



 マリスタ・アルテアスとケイミー・セイカード――――けい護衛ごえいを任されるはずだった二人は、魔法祭まほうさいの警備中ごろに行われたミーティングで、あっさりと彼を見失っていた。



「部屋にも居なかったし、医務室いむしつは寝てる人以外誰もいなかったしシータは検査けんさ中だったし! あーもーホント!! 劇の練習してるからずっと演習スペースにいるって約束したじゃんか!!」

「あんなサラッと嘘吐うそつくんですねアマセ君って……何か他にアテは無いんですか? 彼が行きそうなとこ!」

「えぇー……食堂は回ったし、図書室も見たでしょ……他に行きそうなとこなんて」

「なんでそんな知らないんですかー。彼と一番仲良いのはアルテアスさんでしょ?」

「そっ……そんなこともないと、思うけど」

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