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「――――!」



 顔を真っ赤にし、口をとがらせながら。それでも、真面目なトーンで伝えられる感謝の言葉。

 どう反応していいかわからなかったテインツだったが――――いつもと違い、随分ずいぶんとしおらしい目の前の少女に、ひどく意識を引かれたのだけは理解して。



 必然、彼の顔はみるみる赤くなった。



「――――なっ――――?!」



 られ、赤みを増すシータの顔。



「なっ……なにをあんたまで顔赤くしてるワケっ!? 気持ち悪い!!」

「お、同じく顔赤いくせに滅茶苦茶めちゃくちゃ言うなよっ!? だ、大体こんなのはただの生理現象だっ、断じて深い意味は」

「じゃどういう意味があんのよさっ!?」

「いい、いや、だから、それはっ……僕にもハッキリとはしないが!!」

「ハッキリしなさいよハッキリしないわねっ?!」

「きっ、君の方こそハッキリしたらどうなんだ!? そんな可っ……顔赤くしてどういうつもりなんだっ!」

「せ――生理現象っ! 深く突っ込むなバカ!」

「理不尽だっ!」

「女性はデリケートなのだわよっ!」

「そ、それは尊重したいがっ……!!」

(引いた?!)



 ぐぬぬ、とニラみあう茶髪の二人。

 しかしそれなりに分別のある少年少女だ。やがて無意味にいがみ合う徒労とろうを悟り何より疲れ、どちらともなくベッドに仰向あおむけで倒れ込んだ。



「…………何を信じればいいのか、わからないのだわよ」

「え?」

「犯人はプレジアの人かもとか、国の回し者かもとか、そんなこと言われたらみんな怪しく見えてきて、なんかさ。学祭がくさい楽しむなんて気分じゃなくなっちゃったのだわ。あなたもその辺の感覚は、さすがに私と同じなんじゃないの?」

「その辺の感覚はって……でも確かにね。僕らは実際に襲われてるわけだし。純粋じゅんすいには楽しめないだろうし、楽しむのは間違ってるとさえ思う」

「はっ、マジメな風紀委員ふうきいいんだこと」

「それもあるけど、それだけじゃないよ。解決したいって思うだろ、こんなことが起こったんだから」

「は。私だったら一刻も早く火種ひだねから遠ざかりたいわ。後のことは知ったこっちゃない」

「な……なんてこと言うんだ、」

「ホントあんたって――」

「君には正義感ってやつが――」



 ――偏見へんけんがちらつき。

 目を合わせ、二人は同時に言葉を飲み込んだ。



「と――とにかくサイアクな気分だってことだわよ。わかった!?」

「解ったけど……どうしてそれを僕に話すんだ」

し返さないでよ今結論付けたとこでしょうっ?!」

「わ?! わ、悪かったって。そう怒らないでよ……大丈夫。きっと僕らが解決するから、この問題は」

「は?」

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