33
◆ ◆
「……ん……」
テインツ・オーダーガードが目を覚ましたのは、それからしばらくしてのことだった。
覚めぬ眠気にぼやける視界の中で、意識がゆっくりと現実を――
「……ッッ……!!」
――
飛び起きる。
首を振るまでもなく、視界には複数の空いたベッドと、そして――ぐったりした様子で寝かされている
彼らが何にやられたのかはすぐに検討が付いた。
医務室の引き戸が開かれた。
「!」
「っ……」
服の胸元のボタンを
シータは胸元を隠すようにしながら、早歩きで自分のベッドに戻り、布団にくるまって背を向けた。
右隣のベッドに居たテインツに。
「な……なんだよ君、その動きはっ」
「う、うるさいわよっ。じろじろ見ないで
「シ、シカン……??」
「変態な目で見ないでってことっ!」
「へっ――見てないよそんな風には失礼なっ!」
「はっ、どうだかっ。…………」
十人ほどの空間。
目覚めているのは彼と彼女だけ。
なんて時に目覚めてしまったのだろう、とテインツは思う。
せめて、空いたベッドに寝ていたはずの者達が戻ってくれば――
――空いたベッド。
「無事なんだよな。空いてるベッドに寝ていた奴らは」
「……うん。無事だわよ。
「……なのに治療房に?」
「ねえ、オーダーガード。あなた、アマセ君とティアルバー君の戦いの決着、
「え?」
唐突に投げられた質問は、彼の意識を急速に過去へと飛ばす。
(――憶えてるも何も、忘れるワケないじゃないか。僕はプライドも何も捨てて、アマセにティアルバーさんを倒してくれるように願って、それで――――――)
――――それで、決着は、どう着いたのだったか。
「やっぱり憶えてない?」
「…………どうしてだ? どうして決着の部分だけ、こうもスッポリと抜け落ちて……!?」
「みんなそうなのよ」
「え?」
「みんな。あんたより先に起きた人達も一人残らず、決着の部分だけ憶えてなかった。『痛みの呪い』の部分だけ」
「い……『痛みの呪い』?」
自分と同じ症状を抱えているテインツにシータは、これまでの話を語り聞かせた。
いや、自分に再度語りかけた、と言った方が正しいかもしれない。
国が敵である可能性。プレジアに
先の議論の中で話された何もかもが、シータにとっては現実味の無い、遠く離れた世界の話だったから。
テインツにとっても、それは同じで。
「…………犯人は、国かプレジアの人間…………?」
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