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 …………今度こそ、エリダとパフィラ、そしてシータが目をひんく。

 ギリートさえ、声に疲労をにじませた。



「……まいったねぇ。本当に参った。敵はリシディアそのもの・・・・・・・・・かもしれないのか」



 ……あまり想像したくなかったが。

 敵の正体は王国そのもの。その可能性が、とうとう可能性の一つとして目の前に降りてきた。



「…………話がデカすぎない?」

「だが事実だ。敵の正体はプレジア内部の者か王国内で校長の記録石ディーチェを見ることが出来る立場の者。欲しい情報は敵の素性を割ることが出来るもの、ってことになるな」

「それは俺達がおう。これよりクリクター・オースの身柄を押さえ、事情聴取じじょうちょうしゅを行う。他に記録石ディーチェを確認できた者からも順次じゅんじ事情をく」



 フェイリーがクリクターを横目に言う。

 クリクターも、彼の言を無言で承諾しょうだくした。



「頼む。……一番は、黒装束くろしょうぞくの奴らを捕らえて情報を吐かせることだが」

「それは望みうすでしょ。敵強いんでしょ? しかも複数だし。数も完全に把握はあくしてないし。後手後手ごてごてになっちゃう以上、敵を捕まえるのは難しいよ。勘定かんじょうに入れない方がいいと思う」

「そうだな。それじゃあ次だ。フェイリー」

「呼び捨てかよ……まあ今はいいだろう。なんだ」

「プレジアの門を警備してるのは、毎日必ずアルクスなのか?」

「――!」



 フェイリーの顔が蒼白そうはくになる。

 その言葉で、俺が言わんとしていることに見当が付いたようだ。

 流石さすがアルクスに選ばれただけはある。頭の回転は速い。



「ああ、その通りだ。アルクスの中でもりすぐりの手練てだれを二名、必ず配置することになっている。不審ふしんな者の出入りなど許さん」

「だが実際に出入りしている。可能性は二つだ。門となる転移魔法陣てんいまほうじん以外にもプレジアへの入り口があるか――――敵はプレジアの関係者か」

「そうなるな。もちろん――その関係者の中にはアルクスも入っている」



〝僕、最近よくわからなくなってきてるんだよね。誰がウソつきで、誰が正直者なのか。誰が敵で、誰が味方なのか〟



「へえ。認めるんですね」

「隠してどうなる。さらに不信をあおるだけだ」

「でもそうなると、そもそもあなた方アルクスが校長先生の尋問じんもんをするってこと自体の信頼性が――」

「信じようよ」



 ギリートが目を丸くする。

 彼の言葉を止めたのはリアだった。



「校長先生のように、証拠しょうこから明確な疑いがかかっているわけじゃない。だったら信じようよ」

「えー……根拠も無く人を信じるって妄信もうしんだよ? 裏切られてからじゃ遅いんだ。悪いけど僕は」

「あなたは証明できる?」

「……え?」

「自分が敵側に通じてないって。証明できる?」

「ちょ、リアあんた、」

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