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 システィーナが面食らった様子で俺を見る。



「それじゃシータが襲われ、しっかり記憶まで消されている事実に説明を付けられない。腕章を付けている奴を手当たり次第に狙えばいい風紀の連中と違って、彼女はたまたま試合会場に居ただけのいち学生でしかない。行きずりの人間の顔を覚えるなんて出来ないだろ」

「で、でも……」

「ああ。なのに実際、奴らはシータが呪いの目撃者であることを知り、襲撃している」

「どうやったのー? 会場にいなかったんなら見れないじゃん! シータのこと」

「…………!」



 エリダが目をく。恐らく気付いたのだろう。



 奴らが標的を、特定した方法に。



「校長先生。一つ、質問いいですか」

「……なんでしょうか、ボルテールさん」

「……中継・・されてましたよね、試合会場。記録石ディーチェで」

「その通りです」



 

 エリダの質問の意図に気付き始める一同。

 静かに応じるクリクター。

 当然、この質問を予期していたのだろう。



 ――当然、その先も。



「……録画ろくがは、されてたんですか。あれって」

「…………ええ。実技試験じつぎしけんは、内外ないがいにプレジアの義勇兵『アルクス』の力を保証するための大切な資料でもあります。報道委員会ほうどういいんかいの学生達の力も借り、記録石ディーチェを複数用いて様々な位置から記録しています。――――当然、客席が映ることもあり・・・・・・・・・・うる・・



 ……沈黙ちんもく

 敵が情報を得た手段は、これで割れた。



 そうなると、だ。



「参ったなぁ。参りましたよねぇ」



 大げさに言い放ったギリートがクリクターを見る。



「ん? ってことはどうなるんですかね、校長先生。僕、あんまりその辺くわしくないからイマイチわからないのですが。…………その実技試験の様子が記録された記録石ディーチェって、誰が管理してる・・・・・・・んですか?」

『…………!!』



 目が、続々と――クリクターへと向く。



 プレジア学校長は、あくまで真正面からその目を受け止め、



「基本的には、私です」



 気後れも無く、そう言った。



 それが意味するところは明白だ。

 先まで寝ていたシータも、パフィラでさえも、今やただただ懐疑かいぎを宿した視線をクリクター・オースに送っている。

 しかし、その視線の意味を口にするものは居ない。

 居ないから、ギリートが言った。



「ありゃりゃ。それじゃ校長先生、容疑者ようぎしゃの仲間入りじゃないですか」



 お道化どけた調子の声音に、クリクターは何も返さずに目を閉じ、胸をゆっくりと上下させて深呼吸する。

 再びの沈黙を破ったのはフェイリーだった。



「まどろっこしいのは止めましょう、校長。単刀直入にうかがいます。あなた、あの襲撃者たちの仲間なんですか?」

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