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 驚愕きょうがくが場を貫く。

 パフィラでさえも言葉をしっかり理解したらしい、初めて口を閉じて押し黙っている――――成程なるほど。インパクトのある語り方が確かに理解を進めているようだ。



「ちょ……ちょっとまってよナタリーっ! それって、あたしみたいな貴族以外の奴もってこと?」

「私も入ってるのかしら?」

勿論もちろんです。エリダもリコリス先生も、校長先生もです。唯一――――フェイリー・レットラッシュさん。貴方を除いては」

『!!!』

「……誤解を招く言い方をしないでくれるか。俺が敵側だと思ってそうな顔してる奴が何人かいるぞ」

「ばれた!!!!!」

「安心してくださいパフィラ。レットラッシュさんは敵ではなく、狙われないというだけです。だって彼は『痛みの呪い』を目撃していないんですから」

目撃もくげき……そうか、『目撃』か。それなら解らんでもないな」

「ど、どういうことなのアマセ君。ちゃんと解るように説明してよっ」

「……いいですかパールゥ、皆さん。私の仮説は、『シータは違法に関わっている』ということです。だから違法者の集団に襲われた。ですが違法――法をおかすような出来事、そんな非日常ひにちじょうに彼女はったことが無いと言う。でも、たった一つだけっていたんです。それが」

「あの赤茶モンスターだってこと!?」



 ナタリーの言葉を待たずしてエリダが叫ぶ。



〝『痛みの呪い』は、『無限むげん内乱ないらん』における『魔女まじょり』で、秘密裏ひみつりに使われた精神せいしん拷問ごうもん用の魔術まじゅつ――禁術きんじゅつだ〟



 禁術、すなわち法を犯す違法者。

 シータ・メルディネスは、そしてここで倒れる風紀の者達は、予期せずして違法の存在と遭遇そうぐうしていたのだ。



「違法者に計画的に襲われる。それはそのまま、何かしらの違法を目撃している証拠になる。それが『痛みの呪い』だったのです」

「うー……?」



 どこか得心とくしんのいかない様子でエリダがうなる。

 だが、それも致し方無いだろう。

 これはあくまで可能性の話だ。その上――――



「ん? 待って。メルディネスさんはただ目撃しただけじゃない。それのどこが法を犯すことになるの?」



 ――その点に、説明が付けられない。



 目撃しただけで標的になる。

 何故なぜ



 そして標的にはなれど、命までは取られていない。

 何故?



 敵の狙いがまるで読めない。

 目を覚ましたシータの健康状態も良好だという。

 「実は学祭の企画きかくでした」と誰かが言い出した方が、まだしっくりくるような状況だ。



 ギリートの言葉に、ナタリーは明後日の方向を見てとぼけてみせた。



「さあ。私には分かりません」

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