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「こ、こほん…………無い。ずっと言ってるでしょ。それが敵の目的とやらと何の関係があんのよ」

「ありませんよ。関係など微塵みじんも無い。………………あややー、ちょっと皆さん顔が怖いですよっ☆」

「怖いのはお前だ。まさかお前当てずっぽうで」

「人の話は最後まで聞きなさいな頭でっかちケイ・アマセ。……いいですか? シータ・メルディネスには後ろ暗いことは何もない。そう仮定するならば――――彼女がこのタイミングで違法者いほうものに襲われる理由など、何一つ無いことになるのです」

「え?」



 …………。

 パールゥが、当たり前と言えば当たり前な事実の指摘してきに声をらす。

 対面のリアがまゆひそめた。



「それがどう敵の目的とからむの? ナタリー」

「そうよ。大体それってその……ロンリの飛躍ひやくってやつじゃないの? 敵の目的も分かんないんだし、無差別むさべつに襲われた可能性だって――」

「いや」



 エリダの言葉に、アルクスのフェイリーが反応する。



「無差別の可能性は低いんだ。他の被害者を見れば一目でわかる」

「他の……?」

魔術師まじゅつしコースのエリダじゃわからなくても無理はないですよ。彼らは皆風紀委員ふうきいいんなのです」

「えぇっ!? じゃあ、風紀の人達だけが計画的に狙われたってこと……なの?」

「ますますワケ分かんないじゃないのよ。私は風紀でもなんでもない」

「だとすると……風紀の人達とシータのつながりと言えば、後は貴族であることくらい、じゃないかな」



 システィーナがギリートに言う。



「それ昨日、ビージ・バディルオン君が散々喚わめいてた説なんだ。『平民へいみん』狩りならぬ貴族きぞく狩りだってね……でも、それも被害者の顔ぶれから否定できちゃうでしょ?」

「……そうよね。単純に貴族だけを狙ったなら、こうまで風紀委員に被害がかたよってる理由に説明がつかないものね」

「続けてよろしいでしょうか~???」

「あっ、わ。ごめん。どうぞ続けてくださいな」

「全く。……私も当然、貴族関連で何かあるのではないかと思いました。でもやはり、風紀委員に偏った被害、あわせて襲われたシータ・メルディネスの二つともに符合ふごうする理由を見つけられませんでした。ですから他の共通点を探したんです」



 ――他の共通点だと?



「他の共通点かあ。考えなかったな」

「頭が違うんですよね頭が」

勿体もったいぶるなナタリー。言え」

「誰に命令してんですか。…………『違法いほう』です」

『む……?』



 ……違法?



 場の全員が固まる。

 ナタリーはそれを冷めた目で確認したのち、話を続けた。

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