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「他の子たちは相変わらず。目覚めないけど特段とくだん変調へんちょうも無いわね」

「でも、もしかしたら今後何か起こるかもしれませんねぇ。ね、コーミレイさん」



 シータの対面の壁に背を付けて立っていたギリートが言う。

 シータの居るベッドの奥側、リアの隣にいるナタリーはギリートを見ず、ただ舌打ちだけを返した。こいつはまた何をそう怒っているのか。



 ともあれ、ギリートの言いたいことには予想が付く。



「……風紀委員ふうきいいんは全員目覚めないまま、か」

「そういうこと。これって、メルディネスさんだけ敵に手心てごころを加えられたってことかな。いいや?――――一緒にいたオーダーガード君を襲ったのは実はメルディネスさんだった、とも考えられるか。気絶は自分で――」

「イグニトリオっ!」



 ギリートをにらんでエリダ。

 ギリートは口を真一文字まいちもんじに引き結んで肩をすくめた。

 シータはうつむいて青ざめている。その線は薄そうだな。



「とにかく、今は彼女の無事を喜びましょう。あなた達はそれで十分ですよ」



 なだすかすような声色が場を通る。

 被害者の寝るベッドが並ぶ医務室の一番奥の椅子に座っていた学校長、クリクターはゆっくりと立ち上がった。



「リコリス先生。一応、」

精密検査せいみつけんさの準備ですよね。今救急治療室の準備をさせていますので」

「ありがとうございます。……この調子で、皆さんも目覚めてくれると嬉しいのですが」

「で、でも校長先生……魔力回路ゼーレにも体にも別に異常がないなら、一体襲った人たちは何のためにこんな――」

「本当に襲われるような心当たりは無いのですね? シータ」



 パールゥの声を遮り、ナタリーがシータを見ながら言葉を投げた。



「な……無いわよ。あるわけないでしょそんなもの」

「ほう?」

「ちょっと待て。そこの」



 額にけたごついゴーグルの位置を直しながら、アルクスのフェイリーがナタリーを呼ぶ。



「なんでしょうか、アルクスの方。確かレットラッシュさんでしたか」

「悪いが、この件は極秘事項になってるんだ。見舞いが済んだなら、同じ魔術師まじゅつしコースの彼女達と一緒に退出――」

「ウザいです☆」

「……は?」

「ウザったいですそういうの。大体そんな下らないお役所事やくしょごとな理由で貴重な情報を逃すおつもりですか? というか、退出させるくらいなら入室させないでくださいよ。そちらの落ち度で私達魔術師コースの者の不安をあおるような医務室の光景を見せておいて、極秘だから帰れ? 言ってはナンですが馬鹿です?」

「何とでも言え。君らの命を守るのは何にも優先され――」

「彼女らに見舞いを許可したのは私です、コーミレイさん」

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