17

非道ひどうで俺とのライブデートに漕ぎ着けた奴が何を今更。……と言いたい所ではあるが、その言葉はえて受け取ろう。俺が酷い人なのも事実だ。本来俺はそういう人間なんだよ。私的してき打算ださんでしか動かない、私欲だらけの人間だ」

「…………」

「俺とデートがしたければ、もっと貸しを積み上げることだな。そうすれば、まあそのうち、体を貸してやらんこともないぞ」

「……酷い人だね。アマセ君は」

「そうだろう? さっさと乗り換えて、別の者に熱を上げた方が余程よほど甲斐かいのある――」

「そこまで言っても『嫌い』だとは言わないんだから」

「――――――――」



 ――――刹那せつな、思考がゼロになる。

 その間隙かんげきは、彼女に反撃を許すに十分な時間で。



 パールゥは切なげに、しかしどこか満足気に、顔を赤らめたまま笑ってみせた。



可笑おかしいの、わかってる? ……そんなに、私とデートするのが嫌ならさ。私のことなんて嫌いだって、言っちゃえばいいのに」

「それは……」

「それは?」

「………………」



 …………言葉が出てこない自分に衝撃を受ける。

 全くその・・通りな自分にも、衝撃を受ける。

 だってパールゥの言う通りではないか。考えてみれば――――いや、考えてみなくとも。

 簡単な話なのだ。今ここで「嫌いだ」と、ただ一言、



〝悪い。俺はお前をそういう対象として、見ることは出来ない〟



 あの時と同じように、ただ一言告げればいいだけでは――――



〝だから、私は……天瀬あませ君のことが好きっ〟



「…………そこまで言っても『好き』だとは言わないんだな」

「――――」

「『嫌いと言えばいい』だって? じゃあ同じ言葉を返してやろう。俺が好きなんだろう、お前は。だったら好きだと言えばいいじゃないか。そうすれば俺も――」

「……そうやって私のせいにしたいんだ。だから『嫌い』だと言えないの?」

「話題をり替えるな。今はお前にいてるんだ」

「そこまで言うなら教えてあげる。私はえて言わないんだよ」

「……何?」

「だって私が『好き』だと言えば、君に『嫌い』だと言わせちゃうじゃない」

「……!」

「自分じゃ断れないんだかなんだか、知らないけどさ。君、私が告白してくるのをずっと待ってるよね。解ってるんだよ。そんなズルいの」



〝どうして『ちゅうぶらりん』にしておくわけ?〟



「っ……バカ言うな、お前まで。俺は別に」

「私が嫌いではない? それもひどい言葉だよ、ケイ君・・・。私がそんな意味の『好き』『嫌い』を言ってるわけじゃないの、解ってるくせに」

「解らない。お前達の気持ちなんて俺には、つゆほども解らないっ」

「違うっ。あなたは人の好意に気付いてる、気付いてるくせに知らないふりをするっ」

――」



〝たった一言『その気はない』って伝えるだけの何が手間だってんだよ。それとも、〟



 ……違う。

 俺は、気付かない振りがしたいんじゃない。

 宙ぶらりんにして優越感ゆうえつかんひたりたい訳でもない。

 俺は、



〝オメーにとってマリスタやフォンの奴はその程度ていどの存在だって言いてェのか?〟



「その程度なんだよ、ケイ君が私に――――私達に向けてる気持ちはっ!」

「――――――――」

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