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「だから――協力して欲しかったり、辛くなったりしたときはいつでも頼ってね。せっかく偶然つながった縁だもの、大切にしたいわ」

「…………」



 ……鬱陶うっとうしい、と切り捨てることは出来た。



 でも何故か、この時は体が動かなかった。



〝これからは私がいるからッ!!!!〟

〝忘れないでっ。どんなことをされても、私だけはずっとあなたの味方だからっ〟

〝いなくなっちゃうのはイヤだよ。ずっとここに居て、ケイ〟



 ……きっと、諦めていたのだろう。

 体が分かってしまっているのだ。こうした投げかけをしてくる連中は、きっと俺が何を言ってもがんとして聞かないだろう、と。

 ……くさらせてもなおつながるえん、というやつか。

 


 ――――このままで、いるのなら。



 このくらいは、言っておくべきだろうか。



「……、ありがとう。シャノリア」

「!…………いいえ、こちらこそ練習時間奪っちゃってごめんね。私も、これが言いたくてモヤモヤしてたんだと思う。ケイの目的を聞いたあの夜から、ずっとためこんでたんだから」

のぞきに来なければ済んだものを」

「これも縁、いや……運命かしら。怖いわねー、ふふ」

「用が済んだなら行け」

「はいはい。……フォンさんとのことも、相談していいんだからね」

「行けって」

「はーい」



 シャノリアが出ていく。

 入れ違い、飛び込むようにして中に入ってくるパールゥ。

 案の定むくれている。

 だから何をそんなに嫉妬しっとを上げて――――



「――――リア?」

「練習。するんでしょ。パールゥに聞いた」



 パールゥと共にスペース内に入ってきたのは、リア・テイルハートだった。



「私も、見せてもらおうと思って。クローネと、魔女ユニアのシーン」




◆     ◆




 ――――万感ばんかんを乗せ、騎士きしクローネは魔女まじょユニアを抱き締める。



「『行ってくる。ユニア』」

「『……終わっちゃうんだね。この平穏へいおんも、温かさも』」

「『大丈夫。絶対に生きて帰ってくる』」

「『嘘ッ! こんなに震えてるのに!』」

「『ああ、嘘かもしれない。俺は〝おくびょうくろーね〟だから』」

「『だったら――』」

「『でも、だからといって絶望するのは違う。タタリタはそう教えてくれた』」

「『……無理だよ。タタリタはもういない。仲間もたくさん死んだ。今のあなたは……死に場所を探しているようにしか見えない!』」

「『そう見えるのは……きっと君がそうだからだ』」

「『……え』」



 体を離し、両肩に手を置き。

 出来る精一杯の笑顔で、クローネは笑う。



「『でも、いいんだよ。絶望したって構わないんだ、ユニア。大切なのは、その果てに必ず立ち上がること。そして、また希望のを掲げて歩いていくことだ』」

「『だめだよ……私、もう希望なんて抱けないッ!』」

「『いいんだよ』」

「『え……え?』」

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