8



 ――ガシリと肩をつかまれた。



 振り向いた先にはシャノリア。



「…………何」

「チョット話が。悪いけどフォンさん、二人だけにしてくれる??」

「ッ?!」



 背後から相変わらずの嫉妬顔しっとがおで近付いてきていたパールゥを魔力知覚まりょくちかくだけで察知さっちして声をかけ、俺をにらんだ目を離さないシャノリア。

 目で合図すると、パールゥは不承不承ふしょうぶしょうといった顔で「外で待ってるからね!」と引き下がり、演習スペースを出た。



 場が俺とシャノリアの二人だけになる。



「……何か用か?」

「聞きたいことがあるの。そりゃもう、いろいろいろと」

「変な造語を使うな。前置きはいいからさっさと言えよ」

「今回の貴族襲撃事件。関わってるわけじゃないのよね?」

「何も知らない。朝も答えた」

「嘘ばっかり」

「適当なかまをかけるな。何も知らないと言っただろ。無駄な探りを入れるな鬱陶うっとうしい」

「鎌じゃないわ。確信。まあ今はなんだか吹っ切れてる・・・・・・みたいだけど」

「何?」

稽古中けいこちゅう、ここまで三週間ずーっと。あなた、自分がどれだけ上の空だったか全然覚えてないの?」

「――――」



 ――それは否定出来ない。

 その時に比べれば今はいくらかクリアだ。

 そういえば誰かからも、顔によく出るのだと言われていた気がする。

 くそ、呪いやギリートや劇に意識を取られ過ぎてすっかり失念していた。顔のことなんて。



「やめてくれるか。『発作』が起きそうだ」

「何言ってるの。今あなたに魔波の乱れは感じ取れないわ。都合よく使わないの」

「……分かるのか? そんなの」

「え。……当たり前でしょ。忘れてらっしゃるかもしれませんけどね、私はあなたの監督役かんとくやくけん内々うちうちの保護者なんですからね」



 取りつくろったように当たり前と言うな。面食らってたじゃないか今。



「内々の保護者って」

「表立って言うことはないけど、ってこと。校長先生からも言われてるんだから」

「余計なお世話だ。そりゃあお前にここを紹介してもらったのは感謝してるが」

「じゃあ手間賃てまちんだと思って被保護者ひほごしゃに甘んじなさい」

「………………」

「そんな怖い顔したって無駄ですからね。……さてと。本当に、今回の件に関しては何も知らないのね?」

「知らない。確かな情報は何も手元にない。興味も無い」

不確かな情報はある・・・・・・・・・ってこと?」

「……げ足を取るな」

「おや今口ごもった。動揺も透けて見えやすいから気を付けた方がいいわね」

「あのな――」

「と言いたいとこだけど、まぁ不確かな情報ならいいか」

「……逆にあんた達は何を知ってるんだ?」

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