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◆ ◆
「気にすること無いよ、アマセ君。何様なんだろうね、ナタリーのあの態度」
「………………」
「そりゃあ、
「………………」
「気を落とさないでね、アマセ君。あんなのナタリーの主観、ただの感想でしかないんだから」
「………………」
「アマセ君は十分役立てるよ。頭だってナタリーに負けないし、動くことだって出来ないわけじゃない。ギリート君との劇での戦いのシーンも、ある程度ちゃんと出来てたんだから。それに……ナタリーの代わりにはなれないかもしれないけど。私はいつでもなんでも、アマセ君に協力するよ。言ったでしょ、私は――」
「パールゥ」
「――な、なに! アマセ君っ」
「練習。付き合ってくれないか」
「……え? 練習って」
「劇の練習。正直不足してるから、もっと詰めたいんだ」
「え、あ、劇の……? う、うん。もちろんいいけど、
〝
〝おまけにケイ・アマセのスタンスとしては関わる理由が何一つない〟
〝
――――その通りかも、知れないと思った。
現状、俺が騒いだところでどうにもならないのだ。
「痛みの呪い」のせいで、自分のケツが自分で拭ける確信がない以上、どう動いたところで
であるならば、俺は俺が今向き合うことが出来る課題に――――痛みの呪いの解消とギリート・イグニトリオの謎に注力すべきだ。
あいつの言葉で思考がクリアになるとは。思い付きでも行動してみるものだな。
俺は俺に出来ることをすればいい。
俺に出来ることが生まれてから、取り掛かればいい。
そんな単純なことにさえ思い至れないほど、思考がこんがらがっていた。
……俺、マルチタスクには向いてないのだろうな。
「アマセ君?」
「なんでもない。確か、役者は朝一で集合がかかってたよな、遅れたらいけない、急ごう。練習はその後で付き合ってくれるか?」
「う、うん、いいよ。じゃ、とりあえず訓練施設に――」
「あ、アマセ君とフォンさんだ。やっほー」
聞き覚えの無い声が、俺とパールゥを呼ぶ。
声がした方に居たのは、黒いロングヘアを持つ黒縁眼鏡とマスクという出で立ちの少女。
ベージュローブを着ているその女子に、俺はとんと見覚えが無かった。
「……パールゥ。お前の知り合いか?」
「え。い、いや。たぶん違う……と……」
「あ。そっか。このカッコと
『え』
「じゃっじゃじゃ~ん」
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