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◆     ◆




「死んでください」

「頼む」

「嫌です。死んでください」

「頼む」

貴方あなた本当は馬鹿なんですか? 私にこんな不毛な問答もんどうを繰り返させて一体何のつもりなんですか」



 ギロリと視線。

 器の中で波打つコーヒー。



 俺は奴の陣取じんどるテーブルの前に立ち、その全く容赦の無い嫌悪と侮蔑ぶべつの眼光をただ受け止めていた。

 情報が入る可能性が少しでもあるのだとしたら安いものだ。



「今学校で騒ぎになっている件を早急に解決するために、取り急ぎお前の協力を取り付けておきたいんだ、ナタリー・コーミレイ」

「わざわざフルネームで呼ぶな殺しますよ気色悪い。嫌だっつってるでしょ引き下がれ馬鹿」

「知りたいんじゃないのか? 今プレジアで何が起きているのか」

「知ってますよ私を誰だと思ってるんですかめるな。知った上で貴方あなたなどには死んでも協力しないって言ってるんですよ死んでください」

「お前なら信用できる」

「ばっ――――っ鹿を言わないでくださいますかッ!!?」



 大声。

 声をひそめるカフェの客。

 ナタリーが大きく舌打ちした。



「……そこまで大声を出すことかよ。そりゃ意外だっただろうが」

「黙りなさいっ。何をどう考えれば私を信用する要素が貴方あなたにあるというの――――……」

「……そうだ。マリスタだ。お前は他人にはトコトン不誠実ふせいじつ不寛容ふかんようで信用出来ないが、ことマリスタに危険が及ぶ件に関してだけは絶対の信頼が置ける。と思う」

「…………チッ。ホントにこの朴念仁ぼくねんじんは…………」

「無口だろうが不愛想ぶあいそうだろうが今は関係ないだろ」

「人の小声をしっかり聞いた上であまつさえ返答までするの止めていただけます!? ほんっとにデリカシーの無い!!」

「俺と対面してる状況で聞こえるような小声のお前が悪いんだろ。いいから俺の頼みに応じろ」

「それが人にものを頼む態度かって……はあ。疲れた、ホントにウザったいなもう。……大体動機からして気色悪いんですけど私としては」

動機どうき?」

「いちいち反復しないでいいですから鬱陶うっとうしい。はあ、もうほんとに嫌い……ええ、いつにも増してあなたがキモいんですよ。なんでそんなに肩入かたいれしてるんですか。貴方の目的とは関係ない今回の件に」

「――――、」



 ……考えたことも無かったな。

 いや、



〝何一つ、知ってはいけないよ。アマセ君〟



 ……強いて言えば、意地なのだろうか。



「ま、大方おおかた罪悪感ざいあくかんってところではありませんか?」

「え……罪悪感?」

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