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「襲われたのは第二層のはし。トイレ、利用中に。襲われました」

「トイレ……!?」

「元々利用が少ない場所だ。トイレ前から狙ってたんだろうな」

「すぐに奴らは手、向けてきて。後ろにあった小窓こまどから、逃げて。その時に、上空から振ってきた敵に、この傷を。そのあと、なんとか二人から逃げて。でも、突然三人目、現れて。追い詰められたところを、ロハザーに助けられました」

「奴らは君に武器を向けてきたんだな? どんな武器だった? 服装は?」

「服装は、皆黒い装束しょうぞくひだ・・の目立つ、巻き込んで着込むような装束、でした。武器は、二人目しか見てない、ですけど……幅広はばひろで短い、肉厚にくあつな黒い片手剣かたてけんです」

「君はそれにキズを付けられた」

「はい。この腕の傷です。今のところ、体に異常、ありません。でも、きっとこれは彼らの『トドメ』じゃない」

「トドメ?」

「剣での攻撃、あくまで副次的なものでした。頻繁ひんぱんに使ってきたのは……『けむり』」

「煙の手?」

「手、黒い煙をまとうんです。その手で、私の頭、つかんでこようとします」

「それがこいつらの昏倒こんとうの原因か……? 人相にんそうは?」

「皆、白い仮面をつけていて。分かりませんでした。声も聞いていません」

「風紀委員で洗いましたが、あんな仮装は今回の学祭で使われることにはなってませんでした」

「適当な変装だこと。バレないと思ったのでしょうね、その程度でも」



 憎々しげに言うロハザーに、パーチェが素っ気なく告げる。



「そうだな……だが何にせよ俺達にとって、非常にありがたい情報が一つあるな」

「そう思います。……彼らの狙い、少なくとも私たちの命ではない」



 その場の全員が首肯しゅこうする。実際、それはその通りなのだろう。

 ここに寝ている十数名以外に、被害が出たという話も無い。ということは、今後被害にあったとしても、昏倒こんとうさせられるだけではあるということだ。

 目覚める保証はないが。



 では、奴らの目的は?



「で……戦闘が行えなかった彼女を助け、代わりに戦ったのがお前か。ロハザー・ハイエイト」

「はい。戦闘と言っても、一発りを当てただけですけど」

「なんでもいい。気付いたこと、思ったこと。話してくれ」

「……とりあえず、手応てごたえはありました。それに、一瞬ですけどうめき声も聞いた気がします。中身は魔物とか、召喚獣しょうかんじゅうの類とは違うかと」

「相手は三人だ。その後集中攻撃を受けたりはしなかったのか」

「応援を呼んだことを伝えたらそれ以上攻撃してこなくなりました。数で負けると攻撃してこないかもしれません」

「絶対有利な状況でしか攻撃してこなかった……ってことになるのかな」



 リリスティアが言う。ロハザーが「まだ一例しか無いから何とも言えない」と首を振った。



「それと、あいつら」

「なんだ?」

「……奴ら、退いたんじゃないんです。消えた・・・んです」

「消えただって?」

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