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 リシディア王国軍がようする軍隊の中でも、一般兵いっぱんへいとは隔絶かくぜつした実力を持つ、魔法を使いこなす・・・・・・・・戦士たちのこと。

 一人一人が一騎当千いっきとうせんの働きを約束する手練てだれ揃いで、特にその最強の集団を統括とうかつする七人の騎士長は、それぞれが「本物」に並ぶ実力を備えていると言われる。



 あの女が、その騎士長の候補――――



「そ、それは……すごいわねフツーに」

「ようやく理解したかバカ女。わかったならもう少しふさわしい態度ってものを見」

「バカ女にバカ女言われたくないわよバーカ!!」

「お前わたしの話聞いてたっ!? あんた達とわたし達じゃ色んな意味で格が違うって言ってんのよ!!」

「うっさいわバカ! いくらその人がヘヴンゼル騎士長くらい強かろうと何だろうと、アンタの身分が疑わしいことに変わりはないのよ写真無し王族サマ!」

「こっ、の…………!! アヤメ!」

「はい」

もう一回殺せ・・・・・・こいつ。ホントムカつくわ!」

『!!』



 マリスタと同時に身構える。

 微動びどうだにしない黒の騎士、アヤメ。

 その様子を見て、王女ココウェルはこの上なく愉快そうに顔を笑顔にゆがめた。



「ハッ!! 口ではああほざいてても、体は正直ねぇ! 無様!」

「ッ……あんたねえ、ちょっと頭おかしいんじゃないの!? 気に入らないことがあったらすぐコロスとかなんとか、」

「命がしかったらその口を閉じろ貴族風情ふぜいがッ!!」

「ッ――――!」



 嘲笑ちょうしょうと共に恫喝どうかつの言葉を飛ばす王女。

 言葉通り黙ったマリスタを見るのが楽しくてたまらないのだろう、その大きな胸を抱きかかえるようにして王女は笑う。



「あ~気持ちィ! ほんっと根性なしのクソばかりね、プレジアって!」

「っ……ふざけないでプレジアは関係無」

「黙れって!! 死ぬかお前、なあ!! ははは!……誰に向かって口利いてんだッ!!」

「!…………あんた、」

「ホントさ。誰としゃべってるつもりなの、お前。たかが大貴族・・・・・・分際ぶんざいで。王女の御前ごぜんだぞ身の程をわきまえろッ!!! アハハハハハ!!」

「こ……の……!!!!」

「横のイケメンもよ。顔がいいからって許されると思うなっ。深く謝罪しなさい、『平民へいみん』っ!」

「!!!」



 マリスタの怒りのボルテージがどこまでも上がっていく。

 後先考えない相手をき付ける怖さをわかっているか、王女よ……仕方ない。



「あんたが王国騎士おうこくきしであるという話は信じよう、アヤメ。マリスタの左胸を貫きながら心臓を傷付けなかったその腕、信じるに足ると判断した」

「話が早くて助かる」

「で、そっちの女性の身分についてだが。その気になれば、その女性が王女だという証明は可能か?」

「その気になればな」

「具体的には?」

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